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ウーが話し終えると、ニジカが珍しく弾んだ声を上げる。
「やっぱり何度聞いても素敵なお話。特にね、わたしはその“虹”っていうのが一番素敵だと思うの。ほら、わたしの名前はニジカだから何だか運命を感じちゃうの」
ニジカがそう言うのもウーは何度も聞いたが、友人が楽しそうにしている姿は何度見たって飽きることはない。
「……わたし、一度でいいから虹を見てみたかったなぁ」
楽しげな声から一転、ニジカは俯いて暗い声を出す。
ウーはぎゅっと唇を噛んでから、明るい声色で言う。
「竜の呪いを解く為に、今の王様はあちこちから腕利きの魔術師達を呼び集めて盛大に研究をしているらしいよ。もしかしたら近い内にこの雨がやんで、虹が見られるかもしれないわ!」
「……うん、そうだね。もしいつかこの雨がやんで、空に虹がかかったら──ウーにはわたしのことを思い出してほしいな」
ウーは手を痛い程強く握る。
「え? 何で? 何でニジカのことを思い出さなくちゃならないの? アタシ達は雨上がりに一緒に空を見上げで、一緒に虹を見るんだもん」
「……わたしも、そうしたいよ。でも、わたしの体はそのいつかまでもたないかもしれないなぁって最近思うの」
「そんなの嫌だよ、ニジカとアタシは昔から何をする時もいつも一緒なの。だから、虹を見る時も一緒って決まってるの、」
我慢しなければならない、分かっているのに出来なくて……ウーはぼろぼろと涙を流す。
「……ごめんね、ウー。一緒にいられなくて、」
ニジカは困った様に笑い、ウーの頭を優しく撫でる。ウーはたまなくなって「ばいばい、またね」の挨拶もせずにニジカの部屋を飛び出す。
部屋の扉を閉めると同時、ニジカのすすり泣く音が確かに聞こえてウーは嘘つきな自分を呪いたくなった。
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