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びしょぬれになったウーは、熱をだして数日寝込むことになった。
毎日欠かさずニジカの元へと通っていたのに、それが出来ないでことを歯痒く思う。しかしそれと同時に、彼女の元を泣いて飛び出したことが気まずくて合わせる顔もないとも思うのだ。
発熱から7日後、すっかりと熱が引き元気になったウーは明日はニジカに会いに行こうと決める。そしていつも通り彼女の大好きな話を笑ってしようと意気込む。
夜半のことだった。ウーが眠っていると、家の扉がドンドンと叩かれて飛び起きた。両親と共に扉を開けてみると、そこにはニジカの家の隣に住むおばさんが焦った顔をして立っている。
「ウーちゃん、ニジカちゃんが、ニジカちゃんが大変なの!」
ウーは血の気が引いてゾッとする。
おばさんの話ではここ3日程の間にニジカの病状が悪化。そして今宵、ニジカはいつもより高熱を出して苦しみ危篤状態だということだ。
「ニジカちゃんのお母さんに頼まれ来たの。ウーちゃん、ニジカちゃんに会いに行ってあげて!」
ウーは突然のことに一瞬頭が真っ白になったが、次には高速で思考を始める。
ニジカが死んでしまうなんて嫌だ。直ぐにでもニジカに会いたい。だけどアタシにしか出来ないことが今あるはずだ。それは何? 思い出せ、思い出せ。よく考えろ、よく考えろ。早くしないとニジカがいってしまう……。
ウーは7日前、ニジカの家から帰る途中に見た雨雲の中を飛ぶ大きな影を思い出す。あの影は森の方へと飛んで行った……。
ウーは壁に掛けてある雨がっぱを勢いよく取って雨降る夜の街へと駆け出す。走りながら雨がっぱを羽織るウーが目指すのは、ニジカの家ではない。都の近くにある大きな森だ。
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