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「何だかんだ、こうして一緒にお話するのは初めてだよね」
「……そうだね」
画面の中、左右に仕切られ二つの顔が均等に収まる。それはまるで、リモート会議や、あるいは配信者同士の対談動画でも流しているかのような光景だった。
「当然じゃない?普段はオンとオフが混ざることなんて無いんだし」
「まあねー」
「それに、こんなにオフの顔が長いこと黒画面に映り込むことなんて、普通はないしね」
「いえてるいえてる!だって普通は黒画面を見続けたって、面白くも何ともないもんねー」
少しちゃらけたように語る、オンとオフ。
静止画なので、オンの顔は相変わらず笑ったままだ。しかし、その口調は少しだけ寂しそうだった。
「ねー、オフの主!何とか言いなさいよ!」
「オフの主って何だよ……」
「この画面をじっと見つめてる、アンタの元の顔のことよ!」
黒画面に映った顔の持ち主。
彼女は、オンとオフの問いかけには全く答えない。
なぜなら、彼女は部屋で、パソコンと向き合うような体勢で硬直しているから。
ワンルームのロフトに設置された、落下防止用の柵。そこから掛けた長めのロープで首を括った状態で、ぐったりとモニターを見下ろしている。
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