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先生の家
「先生……一体どうしたらこうなるんですか……」
足の踏み場がないくらいに物が乱雑に置かれていて、中にはゴミがそのままになっていたりもする。いつものことながらこんなところで、どうやって毎日生活しているのか謎すぎる。
「もう、ゴミは捨てないとダメじゃないですか!」
袋の中にゴミと思われるものを片っ端からつっこんでいく。
「そんなに怒らないでよ~。忙しくてさ~。あっ、それは捨てないで」
「いやいや……」
小言を言っても先生には全然響いてない。もう言うのやめよう。
「そうだ、先生」
「ん?」
「僕の……」
エミール様の事を友人と言ってもいいのだろうか。不敬にならないかな。知り合った人?それはそれで他人行儀だしな。
「僕の何?」
「友人が会いたいと言ってまして」
「友人?」
「第2王子様の側近をしている方なんですけど」
「ほぉほぉ、側近ね?」
なぜだか先生が前のめりになった。そんなに食いつく事なのかな?
「えぇ。いかがでしょうか」
「ふむ、やはり近づいているんだな」
「何ですか?」
「いいよ。連れておいで」
「いいんですか!?」
「うん、興味がある」
人に興味がなさそうな先生が興味を示すなんて珍しい。
「分かりました。でも、いつ来るか分からなくて」
「来たら教えて。会えるようにするから」
「すごい乗り気ですね」
「まぁね。側近かー、楽しみだなぁ」
「そうだ、先生、その方にね魔法を教えてもらったんですよ」
「どんな?」
「物質を違う物質に変えるってやつです」
「へぇ、高度な魔法だね。そんな魔法が使えるような子あそこにいたかな」
「何がいいですか?」
杖を取り出して鼻息荒く問いかけた。
「ん? あぁ、やって見せてくれるんだね」
「はい! 練習の成果をお見せしようかと」
「うーん。じゃあ、このひび割れたグラスをティーカップに変えてくれない?」
「分かりました!」
ティーカップ……ティーカップ……イメージして……杖に魔力を集中……
「やった! うまくいきました!!」
「おお、すごいじゃないか。僕が思ってる以上の力を秘めているのかもしれないな」
先生に褒められた! ようやく安定してきたから披露したものの、若干失敗するかもと思っていたから、ちゃんと成果を見せることができてよかった。
「でもね、これを使えることはあまり知られてはいけないよ。悪用されることもあるからね、気を付けて」
「なるほど……確かに。考えもしなかったな」
この国はみんなが魔法を使えるわけではない。全く違う物質に変えるのは難しいかもしれないけど、石を宝石に変えることはできるかもしれない。そう考えるとなかなか危険な魔法だ。
「まあ、君は大丈夫だろうけど」
「勉強になります」
「魔力を使って疲れたんじゃない? お茶にしようか」
「わーい、ありがとうございます。実は少し小腹が空いてました」
「素直でよろしい。今日はね、クッキーを作ってみたんだ。茶葉をね、混ぜ込んでみた」
「おぉ、それは美味しそうですね」
「用意するから少し待っていて」
「はい!」
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