165人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
外が明るくなり始めたのを感じて、日課の水やりと朝食を済ませて外に出た。
「マリーさん! おはようこざいまーす」
前を歩いていたマリーさんに追いついて声をかけた。
「おはよう。ルシアンちゃん」
「今日は1人? 病院でしょう?」
「お友達の家に行くんだよ」
「なんだ、そっか。荷物重くない? 持っていこうか?」
「いいのかい?」
「うん、いいよー。遠いの?」
「いんや、すぐ近くだよ」
マリーさんのいった通り、お友達の家はすぐ近くで、お礼にとクッキーを頂いてしまった。その後も顔なじみのおじいさんやおばあさんにばったり会って、話したり手伝いをしたりしていたら、色々な物をもらってしまって、両手いっぱいの荷物を抱えて歩くことになってしまった。
「おはよう、ルシアンくん」
「あっ、おはようございます」
美味しい定食屋さんの主人がちょうど看板を出しているところに遭遇した。
「買い出し?」
「というわけではないのですが」
アハハと笑うと不思議そうな顔をされた。そりゃそうだ。こんなにも荷物を持っているのに買い出しじゃなければ何だと思うのが普通だ。よく見ると前にはなかった張り紙がしてあった。求人募集だ。短期で洗い場か。なんと!!賄い付き!!これは聞いてみるしかない。
「洗い場の募集してるんですか?」
「うん。いつも入ってもらってる子が怪我しちゃってさ。その子が戻ってくるまでの間だけなんだけどね」
「雇ってもらえないですか?」
チャンス到来。ここぞとばかりに詰め寄るとあっさり「いいよ」と承諾された。
「いつから来れる?」
「いつでも大丈夫です!」
「そりゃ助かる。じゃあ、明日からお願いしてもいい?」
「はい! お願いします!」
「よろしくね」
すごい!トントン拍子に話が決まってしまった。よし、帰ろう。荷物もいっぱいだしな。
――翌日。1日立ちっぱなしで、ひたすら運ばれてくる食器を洗って拭くという作業を繰り返した。なかなかの重労働だ。
「疲れたぁ」
帰宅してすぐに椅子に座って項垂れた。結構腰にもくるんだよな。はぁーとため息を付いて、ネックレスに触れた。石に触れるとなんだか元気をもらえるような気がして、事あるごとに触ってしまう。エミール様のために頑張らないと。……何をプレゼントすればいいんだろう。今度先生に相談してみよう。重いまぶたを何とか持ち上げて、シャワーを浴びようと立ち上がった。
最初のコメントを投稿しよう!