彼の部屋で*

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 彼が僕の体の方に顔を寄せてそっと傷跡に口付けた。優しく何度も。安心したのか嬉しいのか、自然と頬を涙が伝った。 「すまない、痛むのか?」 「いいえ。ずっとこの体を見せることを躊躇っていたので、何だかホッとしたというか」 「痛いわけじゃないんだな?」 「全然」 「よかった」 「もっと……触ってほしいです」 「うん」  また体に口付けを落としながら突起を直に弄り始めた。 「んぅッ……」 「気持ちいい?」 「分からないです……くすぐったいような……変な感じ」 「声聞かせて。誰にも聞こえないから」  また弄られて声が漏れ出た。さっきから下が熱を帯びていて、触りたくなってしまう。 「あっ」  彼の手が下に伸びて羞恥心でいっぱいになる。こんな事になってるなんてバレたくなかったのに。 「あっ、待って」  布越しにスリスリと擦られて腰を引いた。でも、彼はそんな僕を見ながら、中に手を侵入させてきた。 「めちゃくちゃ濡れてる」 「言わないで」 「脱げる?」 「脱ぐのですか?」 「脱がないのか?」 「……フェリクス様も脱いでほしいです」   「いいよ?」  そう言うやいなやあっという間に服を脱ぎ捨てた。引き締まった筋肉質の裸体はため息がでるくらい見事で美しい。そして、そそり勃つものの大きさに慄いた。それに比べて僕はヒョロヒョロで貧相だ。彼みたいにガッシリとした体になるにはどうすればいいのだろうか?   「次はルシアンだな」 「やっぱりフェリクス様はいい体ですよね」 「そうか?」 「憧れます。男らしい体」 「……いや、ルシアンはそのままでいいよ」 「男らしいほうが良くないですか?」 「良くないな」  全部脱ぐと、「このままがいい」とものすごい圧で言われた。そんなに言うならこのままでいいか。 「こんなにも触り心地がいいんだから」  そう言って肌を撫でた。くすぐったくて身をよじると彼が僕の上に覆いかぶさった。手は僕の勃ちあがったものに触れて上下に扱き始めた。 「あぁっ……ダメぇ」 「こっちも一緒にがいいか?」  片手をお尻に這わせて、穴の付近を撫で始めた。触れられているだけなのに、官能的な気分になってくる。体を震わせながらもっとと強請るように腰を動かしてしまう。 「ああっん……」  ついには指を挿れられて体がビクリと跳ねた。 「やっ……あっあっ」 「ルシアン」  熱を帯びた声音で名前を呼ばれて、それすらも性感帯を刺激する。 「フェリクスさまぁ……」  僕の股間に擦り付けるように彼が腰を動かし始めた。これ……すごく気持ちいい。 「ルシアン……一緒に」 「あっん……はい……」  腰と手の動きが激しさを増し、頭の中が真っ白になったあと思いっきり射精してしまった。彼も同じタイミングで出たようで、迸る白濁の液体が僕の体を濡らした。 「ここまでしたら、最後までしてもいいんじゃないか?」 「……そうですけど」 「ルシアン」  誘うように名前を呼ばれたけれど、まだ覚悟が決まらない。 「ダメ。せっかくですから、初夜まで取っておくというのはいかがですか?」 「却下」 「却下って……」 「じゃあ、すぐに一緒に暮らそう」 「まだどこに住むか決めてないじゃないですか?」 「それはそうだが」 「どこがいいですかね?」 「ルシアンの家はいいと思うがな」 「狭すぎるでしょ。身を寄せ合って眠らなきゃいけませんよ?」 「抱きしめて眠るんだから問題ないだろう」 「抱きしめて眠るんですか?」 「そうだ」  そうなんだ。たしかに大好きな場所だけど、ふたりで住むには狭いような……。のそりと起き上がったフェリクス様が僕の体に触れ始めた。 「あっ……今日はダメ」 「なぜ?」 「やっぱり落ち着きません!」 「あんなによがっていたのに?」 「それは……そうかもしれませんが」 「仕方がない。今日は諦める。でも次は」 「わかりました! 次は最後まで……」   「最後まで?」 「……します」 「楽しみだ」  何だかんだ理由をつけようとしたけれど、あれを受け入れるにはもう少し準備をしたほうがいいんじゃないかと少し怖気づいたからだとは口にできなかった。僕の想像を遥かに超える大きさだったのだから。
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