初めての夜*

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 ――んっ? ベルの音が聞こえたような……  目を開けると、明るくて目を瞬かせた。 「フェリクス様?」  ぼーっと彼の寝顔を見つめていると、だんだんと昨夜の情事が思い出された。僕……彼と……。わっ、どうしよう。裸!! 当たり前だけど、改めて見ると……裸で彼に抱きしめられているこの状況、恥ずかし過ぎる。 「んんっ……」  ちょっと、まだ起きないで。タオル……タオル!! 「ルシアン?」 「ひゃあっ」 「どうした?」 「お……おはようございます」  「うん……おはよう」  ちょっと掠れた声がセクシーだ。って……朝から何を考えているんだ。 「そろそろ起きないとマズイか」 「かもしれません」 「んーー」  チュッチュと軽くキスをされた。 「あの……フェリクス様? お尻触らないで下さい」 「柔らかい」 「柔らかい……じゃないですよ。起きますよ」 「ずっと揉んでられる」 「朝から何を言ってるんですか」  寝起きのフェリクス様って変な人になってしまうのか。なるほど。 「はぁ、すぐにここへ越してこような?」 「突然ですね」 「この幸せが毎日続くんだろう?」 「幸せ?」 「朝起きて隣にルシアンがいる。幸せだよ」  変な人だと思ってごめんなさい。やっぱり大好き。 「好き……」 「は? どうした?」 「好きだから好きって言っただけです。さぁ、起きましょう」 「ほんと幸せ」  体を起こしてまたタオルを羽織、昨日着ていた服を身に着けた。 「あのー、やっぱりシーツきれいにしたほうがよくないですかね?」 「……そうだな」 「お願いできますか?」 「俺は何でもできると思ってないか?」 「思ってます」 「できるけど」 「さすがフェリクス様! 頼りになります!」 「ご褒美」 「ご褒美?」 「今日の夜、家に行くから」   「えぇ!?」  呪文を唱えるとシーツはきれいになった。 「よし。きれいにしたからな?」 「了承してませんよ?」 「……」 「あっ、無視しないで下さい!」 「着替えるか」   「もう!!」  そう言って頬を膨らませると「ルシアンはどんな顔をしていても可愛いな」と言われて脱力してしまった。   「今、何時なんでしょうか? フェリクス様、時間大丈夫ですか?」 「なんとかなるだろ」 「えー?」  離れを出て屋敷の方に向かうと、出迎えてくれたお祖父様に「若いって良いのぉ」と笑われて恥ずかしい思いをした。あんな時間までするんじゃなかった……。  朝食というのか早めの昼食というのかを頂いて、帰ることになった。 「早いうちに越して来ようと思っているので、よろしくお願いします」 「いつ来てもいいように整えておくよ。楽しみにしておるからな」  別れを告げ、今日は転移して僕の家に戻った。 「じゃあ、また夜に」 「手加減してくださいね?」 「……善処する」 「善処……」  長ーいキスをした後、彼は名残惜しそうに帰っていった。 「眠すぎる……今日もきっと眠れないし」  フラフラとベッドの方へ行き横たわると一瞬で眠りに落ちた。
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