ハネムーン計画と王女様との遭遇

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ハネムーン計画と王女様との遭遇

「ハネムーンですか?」  ベッドに寝転んでいるとフェリクス様がそんなことを言い始めた。 「うん、休暇を取ろうと思って」 「大丈夫なんですか?」 「大丈夫だ」 「そうですか」 「行きたいところはあるか?」  行きたいところ……どこだろう? 「うーん、そうですね。あっ、北の辺境伯様のところへ行きたいです」 「なぜ?」 「お手紙でお礼はしましたが、やはり直接会ってお礼を言いたいとずっと前から思っていたんです」 「寒いぞ? 暖かいところのほうがいいんじゃないか?」 「雪が積もった山があると聞きました。見てみたいです」 「海は? 見たことあるか?」 「海? ないです」 「とても大きくてきれいだし、釣りもできるぞ」 「そうなのですか? それもいいな」 「南のほうがいいと思う」  何故かめちゃくちゃ南を推してくる。でもでも、北へ行くのも捨てがたい。 「両方は無理ですかね?」 「両方?」 「はい! 北と南両方行っちゃうとかワクワクしませんか?」 「そんなキラキラした目で言われると……」 「そうしましょうよ! ハネムーンだし?」 「……分かった」  渋々といった感じでフェリクス様が了承してくれた。よかった、言ってみるものだな。 「わーい、楽しみですね」 「南はいいとして……北がな……」 「なんですか?」 「なんでもない。ルシアン」  抱き寄せられて唇を塞がれた。 「ん……」  普通に話していたのに急にスイッチが入っちゃうのすごい。いつものようにたくさん愛し合って眠りについた。 ◆◆◆ 「ハネムーン? いいねぇ。どこに行くの?」  片付けを終えて、先生お手製のパンケーキを頬張りながらハネムーンのことを切り出した。 「えっと、北の辺境伯様の領地と、あとは南の方へ。フェリクス様のご友人がいらっしゃるところみたいで」 「北へ行くの嫌がってなかった?」 「あまり乗り気じゃなかったですね」 「だろうね」 「分かるんですか?」 「可愛い可愛いルシアンくんを他の男に見せるなんて、彼絶対に嫌がりそうだから」 「なんですか、それ」 「めちゃくちゃいい男だったりして」 「先生、楽しそうですね」 「うん、楽しい。嫌そうにしてる顔、めちゃくちゃ想像できる。アハハ」  めちゃくちゃ楽しそう……。 「フェリクス様がいるのに、他の男の人なんて目に入りませんよ」 「絶対に聞かせたくないセリフ」 「いつも言ってますよ? 先生のところすら嫌がるから」 「大変だねぇ。そうだ! プレゼントをあげる」 「なんですか?」  席を外したかと思ったら、小瓶を持って現れた。 「はい、これ」 「なんですか、これ?」 「ハネムーンの夜、眠る前にお茶に混ぜてみて。すっごーくリラックスできるから」 「ふーん? ありがとうございます」 「ハネムーンの日まで使っちゃだめだよ」 「わかりました」 「絶対だよ」 「わかりましたって」 「ふふふ。よければ、感想聞かせてね」 「はい」  何だろう。蜂蜜みたいな? 疲れるかもしれないからリラックスできるのはありがたいかも。 「それにしても、これ美味しいですね」 「簡単に作ることができるから、作り方教えてあげるよ?」 「こんなにふっくら焼けるんですか?」 「大丈夫。僕お手製の粉を使ったらね」 「先生って多才ですよね。その粉売れるんじゃないですか?」 「うん、売ろうと思ってる」 「そうでしたか。さすがです」 「ちなみにさっき渡した蜜もとあるところで売ってるんだよー?」 「そうなんですか?」 「ハネムーンから帰ってきたらお店教えてあげる。きっとフェリクスくんは知りたがるだろうなー」 「物凄く勿体ぶりますね」 「ふふふふふ」 「怖いです……」  いつも以上におかしな先生に別れを告げて、家路についた。
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