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――コンコンコン
「はい」
「失礼致します」
出てきたのはエミール様だった。
「おお、これはこれはルシアン殿」
「エミール様、お久しぶりです」
「今日はどうされたのです?」
「王妃様とお茶を。ここに寄ってはどうかと提案されて」
「ありがとう、下がっていいよ。そうでしたか」
「おい、エミール。誰だ?」
奥にある大きなデスクに座るフェリクス様が顔を上げずに尋ねた。書類の山がいくつもできている。忙しいのに迷惑だったかもしれない。
「エミール!……ルシアン?」
ようやく顔をあげたフェリクス様と目があった。
「ごめんなさい。忙しいのに」
「いや……いやいやいや」
ガタンと立ち上がったフェリクス様が慌ててこちらへ向かってきた。
「私は少し席を外しますね」
「どうした? ああ、今日は母上と」
「はい、それでこちらに寄ってはどうかと提案して下さいまして」
「座って?」
「いえ、もう帰ります」
「いいから」
「はい……」
目の前にあるソファに座ると、先に座ったフェリクス様が「違う」と言って膝の上に座らされた。後ろからぎゅっと抱きしめられて……何か嗅がれてる?
「あの、嗅がないでくれますか?」
「ルシアンの香りは落ち着くから」
スーッと思いっきり吸い込む音が聞こえた。
「もう。変態じゃないですか」
僕を無視して一心不乱にスースーしている。怖いんだけど……。
「フェリクス様?」
「うん?」
「もういいですか?」
「うん、次はこっち向いて」
グルンと向きを変えられて向かい合うような形になった。
「ルシアン、キスして?」
「お仕事中でしょう?」
「いまは休憩時間だからいい」
「1回だけですよ?」
「うん」
チュッと軽くするつもりがガシッと頭に手を添えられて離れられなくなった。
「ンッ……ンン……」
めちゃくちゃ濃厚なキスをされて、ようやく解放された。
「ちょっと……こんなところで……」
「誰もいないし」
「いませんけど」
「けど?」
「ふしだらです!」
「はは、すまない」
「お仕事頑張ってくださいね?」
「うん。ルシアンが来てくれたから頑張れる」
「それならよかったです。今日も遅くなりますか?」
「そうだな、遅くなる」
「……分かりました。じゃあ、帰りますね」
「うん、気を付けて」
立ち上がって、見送りに出てくれた彼と別れた。今日も遅いのか。寂しいけど仕方がない。気落ちしながら家路についた。
フェリクス様は言った通り、日が変わる少し前に帰ってきた。シャワーを浴びた彼が、ベッドに倒れ込んだ。
「母上から聞いたんだが、エミリアと会ったそうだな」
「はい、一緒に遊びました」
「ルシアンが庇ってくれたとエミリアが言っていたそうだ」
「エミリア様が?」
「よく分からないが、自分が悪かったと謝っていたと聞いた」
「そうでしたか。叱られないようにと思って言ったのですが、余計なことをしましたかね?」
「いや、そんな事はないよ。大層ルシアンのことを気に入っていると言っていた」
「そうか。それは嬉しいです」
「俺のルシアンなのに、皆がルシアンに惹かれる」
「嫌われるよりいいでしょう?」
「うーん」
「フェリクス様のご家族に受け入れられていると感じられるので嬉しいですけどね」
「俺のルシアンなのに」
「あなた様のものですよ、僕は。さぁ、今日はもう寝ましょう。お疲れでしょう?」
「いや?」
そう言って抱き寄せられた。
「あの?」
絶妙に足を絡めて、僕のものに彼の硬いものが当たるように擦り始めてきた。
「や……待って……だめ……」
「ん?」
「あっ……擦り付けないで」
「どうして?」
「したくなっちゃうからぁ」
「もっとその気になればいい」
「やぁ……ん……休ませてあげようと……思ったのに」
「それは無理だな」
彼の手がお尻に伸びて、中に入れられたかと思うと割れ目をなぞり始めた。徐々に濡れ始めているのが分かる。
「ああっ……もうっ……」
「ルシアンを抱かないと良い睡眠が取れないからな」
「仕方ないですね……」
覆いかぶさる彼の背中に手を回して、ゆっくりと唇を重ねた。
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