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甘い蜜の効果*
夕食を食べ終えて、泊まる予定の場所へとやってきた。
「ここ……ですか?」
宿屋と呼ぶには豪奢過ぎる建物に入っていった。エントランスの中央にはきらびやかなシャンデリアが吊るされていて、緩やかなアーチを描いた階段が見えた。至るところに花が装飾されていて、とても美しい。
「すごいところですね」
「そうか?」
「ただの宿屋じゃないですよね」
「まぁ、王家に関わる者しか使えない場所だからな」
「えっ!?」
「こういう場所がいくつかある」
「次に行くところにも?」
「あぁ、そうだ。ちゃんと許可は取ってあるから心配しなくてもいい」
王室ってすごい。まぁ、普通の宿屋には泊まれないか。
「お待ちしておりました」
「よろしく頼む。ここを管理してくれているイヴァンだ」
「ルシアンです。よろしくおねがいします」
「何かございましたら、遠慮なくお申し付け下さいませ」
「ありがとうございます」
「行こうか」
「あっ、はい」
頭を下げてその場をあとにした。フェリクスさまに連れられて階段を登り、すぐ近くにある扉を開けて中に入った。ソファとテーブルが中央に配置されていて、その奥に扉があるのが見えた。
「隣に寝室がある」
「そうなのですね」
「湯の用意をさせようか?」
「そうですね。歩き回ったので疲れてしまいましたし」
「一緒に入るか?」
「一緒にですか?」
「入りたい」
「ダメです」
「いいじゃないか」
「だってゆっくり入ることができなくなりますので。フェリクス様、すぐに触ってくるし」
「それはそうだが……」
「今日は1人で入ります」
「我慢するか……」
「1階にあるのですか?」
「大きな浴場は1階にある。シャワーだけならこの部屋にもあるが」
「そうですか」
「準備するよう言ってくる」
「お願いします」
あからさまに落ち込んだ感じで出ていくフェリクス様を見て罪悪感が募った。入ってもいいけど……いいけど……でもなぁ、絶対にする事になっちゃうし。ここは、やっぱり1人でにしよう。
準備ができたと呼びに来られて、浴場へと向かった。服を脱ぐところすら広く、扉を開けると想像していたよりも大きな浴槽が目に入った。10人くらい入ることができるんじゃないだろうか。体を洗って、湯船に身体を沈めた。なんとも贅沢だ。と思っていたけれど、広すぎて落ち着かない。明日は一緒に入ってもいいかもしれない。早々に浴槽から出て、用意されていた服を身に纏い、先生にもらったあの蜜を使うためティーセットを借りてから部屋に戻った。
「早かったな」
「広すぎて落ち着きませんでした……」
「そうか」
「明日は一緒に入ってもいいですよ?」
「本当か?」
「はい」
「よしっ」
「ハーブティーを淹れようと思うんですが、いかがですか?」
「俺はいいよ」
「分かりました」
機嫌が回復したようでにこやかに部屋を出ていった。そんなに入りたかったのかと思わず笑ってしまう。人前ではあまり表情を崩したりしないけれど、僕の前では結構感情表現が豊かで、それが特別な感じがして嬉しくなる。
さて、ハーブティーを飲もうか。持参した茶葉と小瓶を取り出した。ポットに茶葉とお湯を淹れて、蒸らした後に、カップへ注ぐ。いい香りだ。そこに蜜を垂らした。入れ過ぎたら甘いだろうか? 恐る恐る口に運ぶ。
「美味しい」
ほのかに甘くて飲みやすかった。さすが、先生だ。どこに売っているのか今度聞いてみよう。飲み終えると体がぽかぽかと温かくなり始めた。
「何だか暑いな」
パタパタと手で顔を仰ぎながらソファに横たわると、だんだんと体が熱を帯び始めた。なんだろう、これ。ものすごくムラムラする。
「んっ……」
手が体に触れただけでビクリと感じてしまった。何、どうなってるんだ? どうしたらこの熱を逃がすことができるんだろう?
もっと触りたい。気持ちよくなりたいと思い始めて敏感になっている胸の突起に触れた。
「あぁっ」
気持ちいい。手を止めることができなくて夢中で弄っていると扉が開く音が聞こえた。
「ルシアン!? どうした?」
「フェリクスさまぁ」
「どうしたんだ?」
「触って?」
「ルシアン?」
「お願い」
怪訝な表情を浮かべるフェリクス様が机の上に目をやった。
「これは?」
「んー?」
「この瓶はなんだ?」
「先生にもらったの。甘い蜜」
「あの男、ルシアンに何を飲ませた?」
「フェリクスさまぁ、脱がせて? 暑い」
「媚薬か? 水を飲んだほうがいい」
「嫌だ。行っちゃだめ」
「少しだけ待っていろ」
フェリクス様が離れていく。触ってほしいのに触ってくれない。
「ルシアン、飲めるか?」
「んっ」
口に運ぼうとするけれどうまくいかない。それを見たフェリクス様が口移しで飲ませてくれた。冷たい……もっとほしい。
「もっと……」
「うん」
何度か水を飲ませてもらった。でも、体は熱くなるばかりだ。
「フェリクス様……」
「ベッドに運ぶから掴まって」
「んっ」
抱きかかえられて、寝室へと運んでもらい、そっとベッドに降ろされた。
「フェリクス様、キスして?」
軽くキスをされて「違う、いつもみたいな気持ちいいやつ」と言うと困ったような顔をされた。なかなかその気になってくれない。その気にさせなきゃ。僕のそばに座る彼の方へ近づいて、服に手をかけた。
「ルシアン?」
「全部脱いで」
「ちょ……分かった。脱ぐから」
彼が脱いでいくのを見て興奮が募り、自分も着ているものを脱いで、彼のものを確認した。まだあまり反応していない。そこに顔を埋めて口に含んだ。
「ルシアン!? 何を!?」
彼がしてくれるように全体を舐めたり、吸い上げたりした。
「きもちぃ?」
「気持ち良すぎておかしくなりそうだ」
「よかったぁ」
どんどん大きくなって頬張ることが難しくなってきた。顎が痛い……。
「ルシアン」
「ん?」
「おいで」
口を離すと彼に抱き上げられて、膝の上に股がるようにして座った。
「気持ちよくなかった?」
「いや、俺はルシアンを気持ちよくさせるほうが性にあっている」
「そうなの?」
「それに果てるならルシアンの中がいい」
「じゃあ、僕の中フェリクス様でいっぱいにして?」
「……くっ、いつものさらに上を行く可愛さ。毎晩使いたくなるくらいだ」
「フェリクス様ぁ?」
「いつもなら白い目で見られるのに」
「まだぁ?」
「今日は眠らせてやれそうにないが、大丈夫か?」
「いいよ? めちゃくちゃにして?」
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