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ウォルケーナへ*
「今、何とおっしゃいました?」
人攫い事件が解決してから、数週間。警備隊の事務所へ赴いたり、逮捕に貢献したしたとかで王室での晩餐会に出席させられたり(いつものごとく何もしていないのに)、慌ただしい日々を過ごしてようやく落ち着いてきたというのに、また爆弾が降ってきた。
「だから、ウォルケーナ国の王室から晩餐会への招待を受けたから行かなくてはならない」
「なぜ、僕たちが?」
「あの時一緒にいた者」
「ああ、あの子」
「ウォルケーナの王太子殿下だ」
「ぇ゙!?」
「どこかで会ったことがあると思っていたんだ。姿を変えていたから確証を持てなかったが」
「嘘でしょ!? 僕タメ口で喋っちゃった。不敬罪で捕まっちゃうじゃ……」
「それはない。ルシアンのことをいたく気に入っているらしいからな」
ジトッとした目で見られた。
「何をした?」
「何も。お菓子をあげたくらいで」
「本当にただの友達か?」
「友達だよ」
「何か言われなかった?」
あの時は確か……
「結婚していると伝えたら驚いてた」
「他には?」
「僕の事を知りたかったとか」
「聞いてない」
「初めて言った」
「君に惹かれているじゃないか」
「どうしてそうなるんだよ?」
「分からないのか!?」
「うーん、分からない」
フェリクス様が大きなため息をついた。
「ルシアン……なぜ君はそんなにも人を惹きつけるんだ」
「惹きつけてませんよ」
「この屋敷から一歩も出られないようにしようかな」
「怖いこと言わないでよ」
本当にできてしまいそうだから怖い。
「他の誰かに取られるのではないかと心配で仕方ないんだ」
「ありえないです。僕が愛してるのはフェリクス様だけです。他の人なんて見えてない」
「ルシアン……」
そう言って彼が顔を近づけてきた。
「ちょっと……急にキスしようとしないでよ」
「いや、今のはする流れだっただろう」
「ふふふ、そうだね」
啄むようなキスをすると、唇の隙間から舌が入ってきて絡め取られた。
「んっ……」
彼の手がお尻を弄りだして欲望に火が灯る。唇を離してジッと見つめると「ベッド行く?」と問いかけられた。首に手を回して「行く」と囁くとそのまま抱き上げられてベッドに運ばれた。服を脱ぎあって覆いかぶさる彼と素肌を重ねた。
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