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僕たちの家へ*
部屋を出て、入口の方へ向かうとシリル殿下とフォスティーヌ殿下が待っていた。僕たちに気づいたシリル殿下が俯きがちになると、隣にいたフォスティーヌ殿下が思いっきり背中を叩いて「しっかりしなさい」と檄を飛ばしていた。フォスティーヌ殿下……お強い。
「ルシアン、僕のせいでごめんね」
「いいのです。顔を上げて下さい」
「また、遊びに来てくれる?」
「もちろんです。この国の事、まだ知らない事だらけなので教えてください」
「うんうん。もう、どうしてこんなにいい子なんだよ」
「お兄様?」
「わかってるよ。もう口説いたりしない」
「くど……?そなた……」
隣のフェリクス様から怒りのオーラが発せられ、フォスティーヌ殿下は「バカなの?」と言って冷たい視線を送った。
「そうだ、ルシアン。これ」
フォスティーヌ殿下から差し出された袋を受け取って中を見ると水晶と思われる透明の丸い玉が入っていた。
「弟が作った試作品。これがあれば顔を見ながらいつでも話ができるらしいの」
「すごいですね」
「魔道具オタクで基本的に部屋に引きこもってるから今日も出てこなくて」
「先生みたいだ」
「先生? あぁ、叔父上のことね。たしかに叔父上には心を開いているものね」
「そうなんですね」
「我々はそろそろ」
「そう、気を付けてね。また会いましょう」
「はい、是非」
「僕もだよ? ルシアン」
「分かってます」
二人に見送られて、城を後にした。転移しかけたところでお土産を買い忘れている事に気付いた。
「あっ、お土産!」
「またすぐに呼び出されるから、今度でいいだろう」
「そうかな?」
「そうに決まっている」
断言したあとに、はぁっとため息をつくフェリクス様。本当に嫌そう。
「じゃあ、また今度にします」
フェリクス様に寄り添うと光の粒に包まれて、あっという間に玄関の前に到着した。扉を開けると、パタパタと走る足音が聞こえてきた。
「まぁ、おかえりなさいませ。早かったのですね」
目を丸くするアンナさんに「ただいま」と告げて、体調を崩して早めに帰ることにしたことを報告した。
「そうでしたか。今日は胃にやさしいものをお出しするように伝えておきますね」
「部屋で休んでいるから、誰も近づけないように」
「かしこまりました」
「行こう、ルシアン」
「うん」
階段を上って寝室へ入り、ソファになだれ込んだ。やっぱり家が落ち着く。
「ルシアンは俺の上だろう?」
寝転んでいるとフェリクス様からそう言われて、起き上がり、大人しく膝の上に座った。
「やはりルシアンの香りは落ち着く」
そう言って僕の匂いを嗅ぎ始めた。
「くすぐったいよ」
「やっとルシアンに触れることができた」
「ごめんね」
「いや、すまない。ルシアンは悪くないのに」
「フェリクス様は僕に何でも話してくれてる?」
「話していると思うよ。嫌なことも嬉しいこともルシアンには正直に伝えている」
「そっか。そうすればいいんだよね」
「一人で抱え込むことはやめてほしい」
「うん、気をつける」
「体調は?」
「もう平気だよ?」
逡巡しているフェリクス様に「この間の続きしよ?」と囁いた。
「大丈夫なのか?」
「大丈夫。もっとフェリクス様に触れてほしいな」
「ルシアン……そんなに可愛い事を言うな」
「続き……してくれる?」
「嫌だと言っても止めてやれないぞ」
「フェリクス様の好きにしていいからね?」
「ルシアン、煽るな」
「ふふふ」
笑いながら口づけを交わした。チュッチュと軽くキスをすると急に抱き上げられた。
「うわ!」
「ベッドでゆっくり堪能させてくれ」
「わかった」
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