一番愛する人

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一番愛する人

 久しぶりにやってきた先生の家で待ち構えていたのは……。 「先生、こんにちはー!」 「ルシアン! 待っていたよ」 「シリル殿下!?」 「こんにちは、ルシアン」  弟君のクレール殿下も顔を覗かせた。 「ここに来るって聞いて会いに来ちゃった」 「フォスティーヌ殿下は? 昨日お話した時は何も仰っしゃられていなかったような」 「フォスティーヌは来ないよ。叔父上と相性悪いから」 「姉上はきれい好きだしね。これを見たら発狂しちゃうよ。ところでさ、使ってくれてるの?」 「あっ、はい」 「どう?」 「問題なく使えてます。すごいものを作られるんですね」 「まあね。そっか、あとはもう少し小型化できればなあ」 「ルシアン、何してるの?」  話をしながら手を動かしているとシリル殿下が驚いたような声を出した。 「何って、片付けを」 「そんな事してるの?」  二人が目を丸くした。 「ええ」 「いいなー。僕の部屋もやってほしい。姉上にいつも怒られちゃうもん」 「ルシアンが部屋の片付けを……何か嫁っぽいよね。いいな」 「キモ。ねぇ、ルシアン。僕の部屋もやってー?」 「俺の部屋に来てくれてもいいよ?」 「はぁ、騒がしいと思ったら珍しいね。知り合いだったの?」  階段を降りてきた先生が僕たちを見て不思議そうな顔をした。 「少し前に知り合って。先生、どうして教えてくれなかったんですか!? 僕、何も知らなくて……」 「えー? だってあそこを出てもう何年も経つし。自分が何者か忘れちゃってたよね。えへ」 「えへって……」 「ねぇ、ルシアンってばー、聞いてるー?」 「おい、クレール。ルシアンはお前のものじゃないんだぞ」 「兄上のものでもないよね? 大体結婚してるし。兄上に勝機はないんだから諦めなよ」 「ぐっ……」  クレール殿下も強い……。穏やかそうな見た目とは裏腹に辛辣だ。 「はいはい、ルシアンくんを取り合わない。そういえば、あちこちから招待状が届いているらしいね」 「はい……先日はゴリス王国へ行きまして、王様から22番目の妻にならないかと言われて丁重にお断りしました。僕、一般市民なのに」 「あは、またライバルが増えるな。フェリクスくんも頭が痛いだろうね」 「なんだって!? 他にはどこに行くんだ?」  シリル殿下からものすごい勢いで問いかけられた。 「えーっと、どこだっけ? ナハリイールとコトアノムとリオネガルと……」 「まだあるのか? しかもリオネガル……。気をつけた方がいい。あそこの王太子はとにかく手が早いから」 「どこもイケメン王子がいる国だよね。結婚してる国はいいけど、ねぇ?」 「ああ、ルシアンの魅力を知る者がまた増えるなんて耐えられない」  頭を抱えるシリル殿下をクレール殿下が冷ややかな目で見つめ「ほんと気持ち悪いな」と吐き捨てた。 「人気者は大変だね、ルシアンくん」 「別に人気者じゃありません!」  結局クレール殿下の強い希望により、また近く彼らの国を訪問する事を約束させられた。フェリクス様になんて言おう。クレール殿下の名前を出せば大丈夫だろうか……。
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