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いつものように眠るまでの間、フェリクス様の膝の上に座って、今日のことを報告した。
「今日さ、先生のところへ行ったの」
「うん」
「じゃあさ、シリル殿下とクレール殿下がいて」
「何!?」
「クレール殿下から遊びに来てほしいって言われてるんだけど、行ってもいい……?」
「クレール殿下が?」
「うん。僕が先生の家片付けていたら、僕もやってほしいって」
「ルシアンはメイドじゃないだろう」
「別に片付け嫌いじゃないし」
「予定が合えばな。誰かさんのおかげで訪問しなければならない国がたくさんあるからな」
「僕のせいじゃないもん」
「いや、ルシアンのせいだ。大体王族を惹きつけるその体質はなんだ? なぜ遭遇するんだ? それでこの間だって口説かれていたし」
先日訪れたゴリス王国でのことを言っているのだろう。素敵な庭園があったから少しだけフェリクス様から離れて見ていると、剪定しているおじさんがいて、色々と質問していたら、その方が王様だったという事があったのだ。庭師の方だと思ったんだもん。それにうんと歳も離れていたから22番目の妻にならないかなんて冗談に決まっている。
「あれは冗談でしょ」
「どうだかな」
少し不機嫌な顔になったフェリクス様に「ごめんね。怒ってる?」と問いかけた。
「怒ってはない。……が気は休まらん」
「行かなくてもいいなら、行きたくないんだけど……」
「そうだよな。全くここぞとばかりに働かせやがって」
二人してはぁっとため息をつく。本当になぜこんなにも訪問しなければならないのか、謎すぎる。
「あっ、エミリアから預かっていたものがあったんだ」
机の上にある書類の中から、折りたたまれた紙を引き抜いた。手渡された紙を開いて、中身を確認する。
「わぁ、ルシアンだいすきって書いてある! 一生懸命書いてくれたんだろうな。可愛い! 2枚目には絵もあります! エミリア様と僕かな? 可愛すぎるんですけど!」
悶絶するくらい可愛さで溢れている。その紙を抱きしめて「宝物だ」と呟いた。
「エミリアに喜んでいたと伝えるよ」
「はぁ、お会いしたいな」
「エミリアも会いたがってるようだから、また顔を出してやってくれ」
「はい、是非」
エミリア様も僕に会いたがっていると聞いて頬が緩んだ。嬉しすぎる。
「そういえば、今日はフォスティーヌ殿下はいらしてなかったのか?」
「うん。先生と相性最悪なんだって」
「あぁ、たしかに合わなさそうだ。まぁ、忙しいだろうしな」
「どうして?」
「兄上との婚約が正式に決まったんだよ」
「婚約!?」
「兄上がずっとアプローチしていて、ようやく承諾してもらえたらしい」
「フォスティーヌ様がお義姉様になるということ!?」
「うん、そうだな」
「わぁ、やったぁ。すごく嬉しい!」
「ルシアンのおかげだと言って喜んでいたぞ」
「僕、何もしてないけど?」
「ルシアンが義弟になるというのが決め手になったそうだ。よほど気に入られているらしい」
「えぇ!? すごく嬉しい」
「ルシアンも懐いているもんな」
「うん、大好き! 早速お祝いの言葉を伝えなきゃ」
「すごい喜びようだな」
「家族が増えるのは嬉しいよ。僕は一人っ子だから兄弟って憧れがあるし、家族は母だけだと思っていたから」
「そうか」
「いつかは僕たちの子供が欲しいって思うけど、こう忙しいとなかなか難しいね」
「欲しいのか?」
「そりゃあ欲しいなって思うよ? フェリクス様は欲しくない?」
「欲しいとは思うが、俺がルシアンの一番じゃなくなりそうで怖い」
「えぇ?」
「子とルシアンを取り合う姿しか浮かばない」
「あはは、何それ!?」
「俺はルシアンの一番じゃないと気が済まない」
「大丈夫……かな?」
「ほら……やっぱり」
「うそうそ、冗談だよ」
この広い世界の中で、僕を見つけて救い出してくれた。そして、いつだって僕を一番に愛してくれる。僕がこの先ずっと一番愛する存在だと思える。それくらい彼のことを愛していると誓える。
「この先もずっと、フェリクス様が僕の一番だよ? フェリクス様も絶対に僕のことを一番愛してね?」
そう言うと嬉しそうな顔をして「当たり前だ」と言ってくれた。見つめ合って、顔を近づけ優しい口づけを交わした。
「子作りしようか?」
「まだ発情期じゃないよ?」
彼の手が僕の服の中に入ってきて、乳首を愛撫し始める。
「あっん……」
彼の首に手を回して顔を近づけ、熱い口づけを交わすと、じんわりと灯った情欲の炎は、やがて僕の中で大きく燃え始める。彼のものが硬くなっているのを感じて、さらに欲は膨れ上がった。
「ベッドで……いっぱい愛して?」
「仰せのままに」
抱き上げられて、ベッドまで運んでもらう。いつも同じことをされているのに、毎回ドキドキしてしまう。そっと降ろされて、彼の顔を見つめた。愛おしさで胸がいっぱいになる。
「愛してる。フェリクス様」
たくさん伝えたい。そして、受け取ってほしい。狂おしいほどに、あなたのことを愛している僕の気持ちを。
優しい口づけを交わして、彼の手に身を委ねる。今日もまた僕たちの長い長い夜が始まろうとしていた。
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