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「ふぅ、お腹いっぱいだ」
「ごちそうさま。美味しかった。ありがとう」
「いえいえ。エミール様はこのあとお仕事ですか?」
「あぁ、そうだ」
「そろそろ戻りましょうか」
「そうだな」
後片付けをしてまた荷物を持ってもらい、その場を後にした。歩いていると畑の方から「おーい」と呼ぶ声が聞こえた。
「ルシアンくーん」
「あっ、ちょっとすみません」
「うん、構わない」
畑にいたジェイドさんに声をかけられた。
「おはようございます、ジェイドさん」
「おはよう。今週時間ある?」
「明日は大丈夫ですよ」
「また収穫手伝ってもらいたいんだ」
「分かりました! じゃあ、また明日伺いますね」
「ありがとう、助かる。よかったらこれ、持って帰って」
「いいんですか?」
「うん、いっぱい採れたから」
「わーい、ありがとうございます!」
また明日と挨拶を交わしてエミール様の元へ向かった。
「すみません、おまたせしました」
「いや、大丈夫だ」
今日はセルジュさんで、明日はジェイドさん。よし、頑張らなきゃ。
「頂いちゃいました」
「よくもらうのか?」
「そうですね。その代わりにお手伝いしたりするんですけどね」
「そうなのか」
もう少しで家に到着しようかというところで、近所のマリーさんが歩いてくるのが見えた。僕に気づいたマリーさんが笑顔で手を振ってくれたから僕も振り返した。
「おはようございまーす!」
「おはよう、ルシアンちゃん」
「今日も暑くなりそうだから気をつけてね」
「ありがとう。そうだ、ルシアンちゃんが好きそうなお菓子をもらったからまた取りにおいで」
「いいの?」
「いつもルシアンちゃんにはお世話になってるからね」
「別に大したことしてないのに」
「それじゃあね」
「うん、気をつけてね」
お菓子ってなんだろう。マリーさんはいつも美味しいものをくれるからな。楽しみだ。
「すごいな」
「なんです?」
「いや、仲が良いんだな」
「そうですね、みんな親切で良い人ばっかりだから」
「君の人柄が良いから、皆親切にしたくなるのだろう」
「そんな事ないですよ」
「何となく皆の気持ちが分かる気がするな」
「え?」
「いや、なんでもない。それじゃあ、俺はここで」
「はい。お仕事頑張ってくださいね!」
「あぁ、頑張れる気がするよ。美味しい朝食も食べたし」
「それは、よかったです」
「また来る」
「分かりました。それでは、また」
光の粒に包まれた彼が姿を消した。あっ、荷物を持ったまま帰っちゃった。まぁ、また来ると言っていたし、なくても困るものではないからいいか。さてと、僕も用意しなきゃ。もらった野菜を抱えて家の中に入った。
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