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「なぁ、今度旅行に行かないか?」
「何、何、旅行!? いくいく!!」
彼氏がなんと旅行という嬉しキーワードを出してきたぁぁぁ。う、うれしぃぃぃ!!
「何処に行くの?」
「それはお楽しみだよ」
後ろで興味本意に私たちを覗いている奴は気にしない。私の膝の上で血まみれの口のまま大きな欠伸をして丸くゴロゴロ喉を鳴らしているボンも気にしない……。そう言えば八月だなぁ……。こんな素敵な夏真っ盛りに何処に行くんだろ? もうウキウキモード全快!!
「じゃあ、来週な……」
「うん、楽しみ……」
そして、旅行当日……。私は大きな麦わら帽子に水色のお洒落なワンピースに可愛いサンダル。どう? 私のファッションセンス。そして右手にはお供え物用の花……
──えっ?──
左手には線香……
──あれ?──
私は何を持っている!? 彼氏は桶に水をたんまり入れて柄杓持参。私は森の奥をじっと見る。薄暗いんだな。ひぐらしの鳴き声が聞こえるし、たまに悲鳴みたいな声も私には聞こえる。なんて素敵な場所。彼氏にうっとり……この道通った先には絶対未知との遭遇、なんかいる。私は彼氏に飛びっきりの笑顔で、にっこり微笑んだ。
「単なる墓参りじゃんかぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
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