姨捨山にて

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 圏外だった。文明の利器も山奥じゃただのガラクタか。いや、そんな事もなさそうだ。スマホの光に照らされ周囲がぼんやりと見えるようになった。僕はスマホのライトボタンを押した。懐中電灯並みに周囲を照らしてくれた。  外から見た時、土蔵に窓らしきものがあった。小さいが人ひとりくらい通れそうな窓だった。僕は周囲を照らした。  窓はあった。しかし鉄格子がはめられていた。これじゃあ出られない。外せないかと鉄の棒を握ってみたがビクともしない。出る事はできないと分かったが明かり採りのために窓は開けておいた。スマホの電池も無限ではない。これで少しは節約できる。  さてどうしようか。周りを見回した。箱やタンスの中身に興味はあったが、今はそれどころではない。下手に開けて妖刀が出てきても困る。僕は土蔵の中を歩いた。すると奥に階段があった。もしかしたら2階にも窓があるかもしれない。僕は階段を上った。  とても急な階段だった。手をついてよじのぼった。ギシギシと音がする。砂埃でザラザラしている。その気持ち悪さを我慢しつつ上り、2階についた。ライトを照らしてみたが窓はなかった。そして天井は物凄く低く、立つことも出来なかった。そして目に付いたのは長細い木の箱。厚さといい長さといい、刀を入れるのに丁度よい大きさだ。ライトで照らすと箱には何やら文字が書かれていた。しかし達筆過ぎて読めない。好奇心に負け、僕は蓋を開けた。  中には錦、かどうか分からないが、高級そうな織物で何かを包んであるようだ。そのフォルムは布の上からでも分かる。絶対刀だ。  ヤバいヤバい。下手に触って封印を解いてしまったら大変だ。僕は慌てて階段を下りた。しかし異変に気付く。真っ暗だ。開けておいたはずの窓が閉まっている。お祖母ちゃんが入ってきて閉めたのか? でもかんぬきを外す音も扉が開く音もしなかった。入口に走り扉を確認する。閉まっている。扉はビクとも動かない。何だ、何が起こっているのだ?  がチャリ……と、背後から音がした。恐る恐る振り返りライトを当てた。するとそこには甲冑を着た武者がいた。
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