貯金箱

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 買いたい物ができたので、定期的に小銭を入れ、少しずつ金を溜めた貯金箱。  その中身がすっからかんになっていた。  一人暮らしの家の中、貯金箱の中身だけが消えるなんてどういうことだ?  もし泥棒が入ったのなら、通帳や他の金目の物も持っていくだろうし、そもそも貯金箱だって、中身だけでなく、入れ物ごと盗むだろう。なのに、なくなっているのは貯金箱の中身だけ。  首を傾げても、そこそこ溜まった筈の小銭は一枚もない。  仕方なく、新たな気持ちでまた金を溜めようと、財布の中の百円玉を一枚入れたのだが、その時、違和感に気づいた。  陶器製の貯金箱なのに、金を入れても音がしない。  しげしげと、昔ながらの、部田の姿の貯金箱を見つめる。すると、描かれていた目玉がきょろりと動いてこちらを見上げ、貯金箱は一目散に、換気のために少し開けてあった窓の外へと逃げて行った。  犯人は、本来金を品だった溜めるあいつ自身か。  入れた小銭がどうなったのかは知らないけれど、完全な窃盗だ。今すぐ戻ってきて俺の金返せ! 貯金箱…完
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