嫌味鍋

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 賑やかな繁華街を歩いていた俺は、 「あの中華料理屋は最高だった……なぁ白雪?」  隣を見た。並んで歩く女――会社の部下である白雪(しらゆき)が笑みを浮かべていた。 「そうですね課長」 「次はどの店にする?」 「次、ですか?」  白雪は大きな目を丸くした。 「せっかくの華金、楽しまなきゃ損だろ?」 「ですけどもう時間が」 「おいおい夜はこれからだぞ? それに白雪、お前には彼氏も旦那もいないじゃないか」 「……それが何か?」 「鈍いやつだなぁ」  俺は額に手をやり天を仰いだ。 「白雪が一人寂しい夜を過ごさないように、とことん付き合ってやると言ってんだ。本当にお前は察しが悪い。だから仕事でもよくミスをする。分かるか?」  視線を空から白雪に戻す。白雪は俯いていた。 「どうした白雪? 腹でも痛いのか?」  長い黒髪に隠れる横顔を覗き込もうとした、その時。 「よろしければ私の家にきませんか?」  白雪がこちらを見る。白雪の表情は明るかった。 「とっておきのお料理をご馳走しますよ」  予想外の提案に面食らう。 「今から白雪の家に?」 「何か問題でも?」 「別にないが……本当に良いのか?」 「私は構いません。それに課長おっしゃいましたよね?」  白雪は上目遣いになる。白雪の黒々とした瞳に俺の顔が映り込んだ。 「私が一人寂しい夜を過ごさないように、とことん付き合ってくださるって」 ※        
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