嫌味鍋

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「上等なヒニクに胃がびっくりしちゃいましたか?」  突然視界が真っ白になった。眩い照明の光に片手で目を庇う。 「ヒニクを無理して食べると、滲み出る苛立たしいほどくせが強くドス黒いに胃がやられ、(はらわた)が煮えくり返るような痛みを伴うんですよ」  気づけばすぐそばに白雪が立っていた。 「な、なぜ……」  俺は声を絞り出す。 「お前は……平気、なんだ?」 「ああそれはですね」  白雪が微笑んだ。 「私はこの状況を毎日夢に描きながらヒニクを食べ続け、耐性を作っていたからですよ」  白雪が歌うような口調になる。 「課長から受けた嫌味を何度も復唱したんですよぅ? 暗闇の中、毎日、一人で、喰らい、もだえ、自分のお腹が全てを飲み込むブラックホールになるまでねぇ」  意識が遠のいた、かと思えば、波のように押し寄せる激痛に意識が覚醒する。絶望と恐怖の暗黒に堕ちていく俺を見つめながら、 「私が一人寂しい夜を過ごさないように、とことん付き合ってくださいね?」  白雪は腹黒い笑みを浮かべていた。      
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