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みずたまり、みずたまり。
朝起きた時、カーテンの隙間から日の光が差し込んでくるのが好きだ。今日は朝から晴れている。それだけで気分が明るくなるというもの。
「う、うーん……」
中学二年生の黒岩彰乃は、目を細めて伸びをした。目覚まし時計がちりり、ちりり、と少し弱った音を立てている。そろそろ電池が切れてきたのかもしれない。そんなことを思いつつ、ボタンを押してアラームを止めた。
ごろんごろんと布団の上から転がり落ちて、ひんやりとした床の上でのびをした。五月下旬。最近は暑い日が続いているので、パジャマの下にはうっすら汗をかいている。冷たい床が気持ちいい。ずりずりと転がりながら、まずは窓を開けにかかった。
マンションの三階から見える空は青く晴れ渡っている。気持ちよい風をいっぱいに吸い込むと、とりあえず顔を洗おうと部屋を出た。
「あ、おはよう彰乃。今日は自分で起きられたのね」
洗面所は、母が洗濯の準備をしていた。パートタイムの仕事をしている彼女は、彰乃より少し早く家を出ることになる。ゆえに、いつも彰乃よりちょっと早く起きて先に洗濯機を回しているのだ。
「おはよう、お母さん」
顔をばしゃばしゃ洗ってタオルで拭ったところで、嫌なことに気付いてしまった。
母が風呂場の竿に、ハンガーをひっかけている。――あれをやる必要があるのは、風呂場に洗濯ものを干す時だけだ。
「お母さん、今日いい天気なのに、洗濯外に干さないの?」
うちの賃貸アパートは、南向きで日当たりも良好である。今日は外の干したらよく乾きそうな日だというのに。
「午前中だけなら干してもいいんだけどね。うち、取り込む人がいないから。私もお父さんも夕方や夜まで仕事から帰らないし、あんたは学校だし」
彼女は洗濯ばさみが入ったバケツを出しながら言った。
「でも、今日午後から雨だっていうのよ。天気予報で言ってた」
「ええ、まだ梅雨入りには早いのに……」
「五月でも雨は降るでしょうが。そんなわけだから、あんたも忘れずに折りたたみ傘持っていきなさいよ。去年買ってあげたやつあるでしょ」
「バッグに入れっぱなしだから、それはいいけどさあ……」
ええ、と急にげんなりした気持ちになる。別に母が悪いわけじゃない。午後から雨が降るならば、風呂場に干して風呂の乾燥機でかわかすしかないのは確かなことだ。うちの洗濯機は古いので、こっちの乾燥機を使うと乾きが悪い上、一部の洗濯物は皺だらけになってしまうためである。
理にかなってはいる。けれどそれはそれとして、こんなにいい天気なのに雨が降るというのが単純に嫌なのだ。
「いい天気だと思ったのに」
ため息をつきながら、リビングに戻った。相変らず、窓からはさんさんと明るい陽射しが射し込んできている。そんな天気予報なんて外れてくれればいい。
雨も嫌いだし、月曜から雨というのも鬱屈した気持ちになって苦手だった。
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