28.正義のヒーロー

1/1
前へ
/32ページ
次へ

28.正義のヒーロー

 私はパンツマン。今は警察署からの帰りだ。  トボトボと歩いていると遠くから女性の悲鳴が聞こえてきた。 「きゃーっ、ひったくりよ!」  何だと?!  私は声の聞こえた方に向かって駆けた。  その時、女性物のバッグを脇に抱えた怪しい男が私に向かって走ってきていた。  まさかあいつがひったくり犯か!?  私は男の前に両腕を広げて立ち塞がった。 「邪魔だどけぇ!」  何と男はナイフを取り出した。切っ先を私に向けている。走る速度は落ちない。  ガキンッ!  金属と金属がぶつかるような音。  ナイフは私の厚い胸板に阻まれ、グニャリと折れ曲がっていた。 「な、なんて筋肉してやがる!?」 「ふははは、観念しろ! そりゃあ!」  私はすぐに男を捕縛する。やがてパトカーの音が聞こえてきた。  ピーポーピーポー。 ー1時間後!ー 「初じゃね? お前が善行で警察署に来るの?」 「はは、照れますな」 「まあいい。お前には感謝状と金一封が贈られる」 「むっ、お金が……?」 「良かったな」  金はありがたい。私は広い家を借りたいのだ。  そうか。こうやって人から感謝されるとお金が貰えることもあるのだな。いや、勉強になった。  後日、表彰を受け、警察署からの帰り道、お婆さんが私に近寄ってきた。 「あなた、パンツマンね。先日は私のバッグを取り戻してくれてありがとう」 「いえいえ。人助けがヒーローの仕事ですからな」 「あなたのこと誤解してたわ。ただの露出狂だと思っていたけれど、ちゃんとヒーローなのね」 「ええ!」  まあ、金一封も貰ってしまったからな。 「あいたた……」  すると、お婆さんが突然腕を押さえた。 「むっ、どうしましたか」 「実はひったくられたときに腕を痛めてしまったみたいでね。全然大したことないのよ」 「いや、良くないですね。きちんと病院に行きましょう」 「いいのよ。医療費も高いし……」 「むむ……」  金ならあった。 「でしたら、このお金を使ってください。元々ヒーローに金一封など不要なのです」  私はお婆さんにさっき受け取ったばかりの金一封の入った封筒を渡す。 「あらあら……でも受け取れないわ」 「では、さらばだ!」  私はその場を立ち去った。  家を借りるお金などまた稼げる。写真集を売ればいい。 「何だか脱ぎたい気分だな」  気分がいい。  私はパンツマン。  ヒーローだ。  続くっ!
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加