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その2 マリーゴールドの種(3)
気が抜けないまま夜になり、キャラバンは足を止めて休息に入った。
馬車を使う以上、馬に無理はさせられない。危険ではあるが休息は必要になる。
「ねぇ、あんたは休まないの?」
焚き火の番をしていると、ルティが隣に腰を下ろす。
返すのは、曖昧な返答。
一晩程度なら、休みなしでもなんとかなる。
「そう……」
味気のない相槌が返され、会話が途絶える。
「悪かったわね」
僅かに間をおいてぽつりと、ルティは告げる。
「本当に野盗が来るなんて、思わなかった。この前つまらない依頼をしちゃったから、その分、今回は楽に稼いでもらおうって思って依頼したんだけどね……」
その声には元気がなく、僅かに影が感じられた。
「今回もあんたがいてくれて、助かったわ。ねぇ、シーク。このクエストが終わったら……」
そこで、言葉が途切れる。
疲れていたのだろう。ひとの肩を枕にして、ルティは眠っていた。
夜は魔物が活発に動き回る。
危険であるからこそ、野盗が動く可能性は低い。
来るとすれば明け方。
今度は策を練ってくるだろう。
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