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衣替えの最中に、クローゼットの奥から見つけた、あなたが好きだったブランケット。
少し大きめのそれは、ソファにいるあなたといつも一緒だった。
「触り心地が気に入ってる」
そうあなたは言うけど、僕には少し硬くて重くて………
両手を広げて「おいで」って言われると嬉しくて一緒にくるまったブランケット。
あなたが行く時に一緒に失くなったから、持っていったんだと思ってた。
ここにあったんだ………
僕とあなたの時間が詰まったブランケット。
ソファで愛し合った後、僕が寒くないようにこのブランケットで僕を包んだあなた。
僕は、あの頃のようにブランケットを広げて包まれながらソファに寝転んだ。
懐かしい重みがあなたを思い出させて、愛しい残り香を探すけど、それはもう……少しも残ってなくて………
寂しさが胸を締め付ける。
あなたが触れた僕の身体を、自分の指でなぞってみても、あなたがくれた快感は少しも得られなくて…………
「逢いたいよ」
「早く…………僕に触れてよ」
なぜ僕達は、別々の夜を過ごしているんだろう………
ブランケットなんて、見つけなければ良かった。
これは、あなたの代わりにならないから…………
僕はソファから立ち上がると、ブランケットを丁寧に畳んで、クローゼットの奥へと隠してそっと扉を閉めた。
あなたが戻るまで、もう出さないと決めたブランケット。
一人で包まれるのは、心が冷えてしまうから…………
来年の衣替えまで、クローゼットで待っていて………
その頃にはきっと………あなたと一緒に包まれるから………
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