虹がかかればそれでよかった

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「さっきから聞いていれば配慮配慮というけれど、我々障害者への配慮はないのかね?車いすとか、杖をついている人とか、そういう人が混じってくるだけで配慮をしているというアピールになるでしょうに」 「そ、それなら言わせてもらうです、けど!だったら、なぜ、描かれているの日本人だけ?アジア系だけ?我々、外国の人も、参加させるです、それがいいです!」 「おい、外国人って黒人だけを言うつもりじゃないだろうな?白人への逆差別が最近多くてうんざりしてるんだ、勘弁してくれ」 「思ったんだけど、そもそも学校って言う場所で本当にいいの?学校に行けない子供達への配慮とか遠慮はないの?そういうクレームが来たら困るんですけど」 「虹はいいけど、雨上がりがいいのかどうかは微妙じゃないかしらね。雨が苦手な人だっているし、水に濡れるアレルギーが……」 「それを言ったら紫外線アレルギーで日光に当たれない人もいる、青空であればいいなんて問題でも……」 「動物は?動物保護を大事にする企業であるべきでは?」 「犬アレルギーの人への配慮もいるでしょう、猫も追加するべきです」 「いや、その動物たちにリードがついてないと問題が……」  こんな調子。  私は必死で全員の要望をメモしていったが、文字はどんどん多くなるばかり、ごちゃごちゃしていくばかり。  しまいには、最初に原案のイメージイラストを描いてくれた若い女性社員から、どことなく寂しそうな視線まで向けられる始末。 ――こ、これ……ほんとどうしたらいいの!?  最終的に、原案は見る影もないものとなってしまった。  もう一度デザインができる社員にイメージを作って貰ったが、何が何やらわからない絵となってしまっている。  だだっぴろい何もない空間、白い空に虹だけがぽつんと浮かんでいる。しかし、その虹も空間にひしめく大量の人々や動物のせいでほとんど見ることは叶わない。  私達は何を伝えたかったんだろう。そう思ったら、なんだか悲しくなってしまった。
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