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「ま、レイプまではされなかったってことで、ひったくりか何かに遭って暴行されたことにしよう。お前が見つけたことにして病院へ連れて行けば、俺は疑われないはずだ。俺は今から急いで実家に行くから、ここにはいなかったことにできる。母親に証人になってもらえばいい。今すぐ行けば上手くいくだろ」
話しながら早苗のバッグを弄り、財布を探していたが、小柄なバッグだったため、そのまま持ち去ることにしたらしくバッグごと手に持った。
「そんな、上手くいくわけないですよ。ひったくりなんて。顔がこんなに腫れるほど殴られているのはおかしいでしょう。先輩、暴力はしてないって……、奥さんの怪我は先輩がやったんじゃないって言ってたじゃないですか……」
生田はおろおろと焦り、弱々しい声で智也に反抗する。
「こいつが歯向かってきたから、夫として躾けてやっただけだ。暴力じゃない。車の中で身動きが取りづらくて、力加減を間違えただけだ」
「大丈夫でしょうか。気を失ってるみたいですけど、致命傷とかはないですかね?」
生田は智也の言い訳よりも、早苗の状態が気がかりだった。
「大したことないはずだ。酔っ払ってるせいで寝てんじゃねーか?大げさなんだよ。演技かもしれないぜ」
「打ちどころが悪かったのかもしれませんよ。救急車を呼んだほうがいいですかね?」
生田は心配しながらも、パニックになっていて何もできずにいる。
「とにかく、お前と二人で飲んでここに送ってきたけど、悲鳴かなんかが聞こえたから戻ってきてみたら、こいつが倒れてたってことにしよう。バッグがなくなってるから物盗りだってすぐわかるだろう」
「救急車を呼んで、そう言ってもいいですかね?」
「騒ぎになるのはまずい。誰かに見られてるかもしれないからな」
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