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絵麻【7】
レストランからカップルを追いかけてきた絵麻は、辿り着いたコンビニの店内に入ったあと、雑誌を読む振りをしながら、店の前に停まっている黒のセダンをじっと観察していた。
助手席から女性が降りた。
1台分の間を空けて停まっていた隣の車に向けて何かを話しているようだった。表情は俯き加減で強張っている。
程なくして女性は隣の車の助手席に乗り込んだ。
黒のセダンの運転席から男性も降りてきて、隣の車の運転席に歩み寄っていく。なにやら話したあと、財布から取り出した紙を運転席から出てきた手に渡していた。
すぐに手は車内へ戻り、車はバックをして駐車場から出て行った。
見送っていた男性は店内に入ってきて、缶コーヒーとタバコを買うと、店の外にある灰皿の近くでタバコを吸い始めた。
男性が車に乗ったら絵麻も立ち去ろうと考えていた時に、男性がスマホを耳に当てた。
当てたと思うとすぐに耳から離し、慌てた様子でタバコをもみ消すと、急ぎ足で車へと戻ってすぐに発進させた。
先程目の前で起きた出来事との関係に思い至った絵麻は、本棚に雑誌を戻して急いで後を追った。
あの慌てようでは尾行には気がつかないだろうと判断した絵麻は、とにかく見失わないようにだけを心掛けて、黒のセダンのすぐ後ろに付いて走った。
車はすぐ近くのアパートの駐車場に入った。
薄暗いが、電灯が何ヶ所にもあったので、遠くからでも見通すことができた。
駐車場の入り口付近に停車し、音を立てないように気を配りながら、黒のセダンが停まったあたりに近づいた。
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