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絵麻は、ついさっき調べていた離婚の証拠集めのことを思い出し、スマホのボイスレコーダーを起動した。
黒のセダンの男性と、もう一人別の男性の声がする。二人で話しているようだ。何か重く不安定なものを車に積み込んでいるように見える。絵麻は不審に思って咄嗟にスマホで写真を撮った。
夜もふけ、23時に近づいているこの時間では、住宅街にある駐車場は静まり返っている。距離をとっていても会話の内容は十分耳に届いた。
二人の会話から推察するに、もう一人の男性は、やはり女性の旦那さんのようだった。
車に乗せていたのが、殴られて気絶したその女性だったことがわかると、絵麻は怒りで目の前が真っ暗になった。すぐさま警察と救急車を要請した。
レストランでの通話から予想した通り、二人は知人同士であることは間違いない。上下関係もあるようで、絵麻の仮説に信憑性が増したと言える。
立ち去ろうとする言葉を聞いて、絵麻は焦った。
逃がしてはならない。警察と救急車が来るまでは、ここに留めておかなければならない。
絵麻は二人の男に対する抑えきれない嫌悪と怒りで腸が煮えくり返っていたが、それ以上に、あの女性の力になりたいという想いでいっぱいだった。
サカであろうがなかろうが、絵麻が今この場で行動を起こせば、あの憐れな女性の助けになることができる。それだけでも動く価値は十分だ。
絵麻はそう覚悟を決めると、二人のいるところへと歩き出した。
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