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「旦那さんの反応は?」
「うーん、知らなかったことだから仕方がないって反応でしたよ。僕たちは結構仲が良いので、僕が既婚の女性にしていることもご存知ですから。僕は先輩に嘘をつかないですし、僕が嘘をつかないこともわかってくださっています。先輩は奥様がなびいたことの方が問題だとおっしゃっていましたね」
「それで鉢合わせて奥さんにお灸を据えようとした?」
「先輩の意図はわかりませんでしたが、今日奥様を誘って食事をしたあと、コンビニで待ち合わせようと言われました。しばらく忙しかったので、今日まで早苗さんとお会いする機会がなかったんです」
「あなたは早苗さんに対して、単なる火遊びの相手としてしか感じていなかったのですか?」
絵麻からの問いに、生田は3秒間だけ静止した。
「そうですね。ですから、単に仕事帰りにご自宅へ送るだけ。二人きりで食事をしたのも今日が初めてです」
「そんなことをして楽しいのですか?」
絵麻は生田を睨んだまま目を離さない。生田の表情の変化を見逃さないよう、神経を集中している。
「楽しいです。プラトニックな恋愛ってセクシャルなものよりも面白いんですよ。身体の関係になってしまうとむしろ冷めてしまうこともある。触れるか触れないかのギリギリで相手を求めている瞬間が、最も楽しい時ですね」
「それで相手の女性が苦しんだり、離婚することになったとして、あなたはどう思いますか?」
「それは僕の問題ではありません」
絵麻は10秒ほど待ってみたが、生田はその次の言葉を継がなかった。
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