絵麻【1】

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 送信してからすぐに返信がきた。  サカ☆カササギ[2年もろくに会話してないと、むしろ会話になる方が面倒かもしれません。何を話したらいいかわからない。旦那が私に話しかける内容なんて、注意か叱責くらいしかないし。怒られてばかりだからむしろ会話がない方がいいかも笑]  絵麻は、相手が大袈裟に話を盛っているのか事実なのかわからず、返信に迷った。深読みすれば、モラハラっぽいと考えられないでもないが、これだけでは判断はできないし、深入りすることにも躊躇した。  文面を考えていたらランチセットとコーヒーがきたので、そちらに意識を向けた。ランチはナポリタンとサラダだった。カフェの軽食なんて大したものではないと高をくくっていたが、思ったよりも美味しい。雰囲気もいいし、混んでいないし、通おうかしら、と考えた。  食事を終えてコーヒーに手を付けると、既に冷めてしまっていた。ランチと一緒に持ってくるというのはどういうことなのだろうか。カフェだからメインはコーヒーであって、料理はおまけということなのだろうか。レストランではまず先に食事があって、コーヒーが後に出る。店の方針というよりも、意図が違うということか。  スマホのメール画面を開いて、サカ☆カササギから来ていたメールを再読する。  おせっかいをしてもいいことはない。サカ☆カササギの愚痴にはあまり触れないように共感した反応だけに留め、買い物をしたこと、隠れ家のようなカフェを見つけて嬉しかったことなど、当たり障りのない返信をした。  会計を済ませて店を出ると、影谷は店の前で待機していた。絵麻が車の方へ踏み出した瞬間、影谷は運転席から降り、後部座席のドアを開けた。 「いかがなさいますか?」 「帰宅します」  今日はもう帰ろう。清香の存在を感知したことで、様々なことが思い出されて、疲れてしまった。
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