早苗【9】

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 夫が寝静まり、ようやくホッと安堵できていたあの感覚は、パートを終えて帰路に着いたときの安堵と似ていたことにも気がついた。義務を無事に果たしたときの達成感だったのだ。それが愛情だと錯覚して生きていたのだ。  智也と結婚する前はどうであっただろうかと振り返る。  大学時代はアルバイトをしたお金は半分貯金して、残りは自由に好きなことに使えていた。  家事も家族で協力していたし、互いに感謝の言葉を掛け合っていた。  友人とは好きな時に好きなように遊んでいた。  趣味である読書や映画鑑賞も、それしかないのではなく、それをしたいがために好きで見ていた。  振り返ると、毎日が多様な喜びに満ちていたのだと思い出した。  早苗はショック状態から立ち直るのに30分ほど要した。EMA522に返信を書かなければ、と我を取り戻した早苗は、急いでメールの文章を入力した。
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