絵麻【9】

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絵麻【9】

 絵麻は嬉しかった。思い切ってサカ☆カササギにリアルで会うことを提案してみたら、喜んで承諾をしてくれたのだ。  二人のメールはこれまでが緩すぎたと言わんばかりに互いのプライベートに踏み込んだ内容になり、自分の抱えていた悩みも話したし、サカも詳しく語ってくれた。サカの夫に対する固定観念に一石を投じることにも成功したようで、躊躇わずに踏み込んでみて良かったと思った。  それからは些細なことでも相談し合い、互いの夫や義家族への愚痴に対して違和感があれば指摘し合ったりして過ぎた。  以前のサカからは想像ができないほど夫に対して冷静な見方ができるようになっていて、その日受けた夫からの理不尽な態度や言動を自分なりに解釈したり、時折絵麻に意見を伺っては自分の歪んだ視点を正すように努力していた。  そのようにしてそれまでの呪縛から少しずつ解放されているようだった。  本当に自分は夫を愛しているのかを自問し、それまで(こうむ)ってきた人格への否定、存在理由に対する歪曲した強要を何度も思い返して、離婚をも視野に入れ始めたようだ。  サカは、不倫もDVもモラハラも全てを表沙汰にすることで、これまで受けてきた仕打ちに対して復讐をしようと考え始めたのかもしれない。  傷害に対する刑事告訴はもちろん、不倫とモラハラの証拠集めだけでなく、自身の不貞を晴らすための方法をも模索しているようだった。
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