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絵麻はアドバイスをするだけに留まらず、金銭的に不利なサカを助けるために、自分の持っているGPS端末やボイスレコーダーの貸出を申し出たり、いざとなれば証拠集めにも協力すると言って、サカの行動を後押しした。
サカだけでなく絵麻も変わり始めていた。
サカとのメールのやり取りを通じて絵麻も奮起し始めていたのだ。
サカからの言葉を受けて、周囲からの評価よりも自身の幸福についてを考えるようになっていた。
これまでの絵麻は、両親から認められるためにと努力をしてきた。父親のために結婚をして会社を継げば、親からだけでなく社会的にも評価を受けることになり、それが自分の価値に直結すると信じていた。
それが人生の幸福であり、自分の存在意義だと信じて疑わなかった。
それによって倦怠感や虚無感がもたらされたとしても、そんなものは自分で解消するべきものとして考えていた。
しかし、それになんの意味があるのかと問われたときに思い浮かんだ答えは、自分を誤魔化すための言い訳しか出てこないことに気がついた。
他人からの価値が自分にどんな意味があるのか。得たものは怠惰と虚しさだけではないか。他人のために自分を抑えて努力しても、それによって他人が幸福にしてくれるわけでもなく、自分も幸福だとは思えないと気づいたのだ。
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