絵麻【9】

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 2時30分を過ぎた。  スマホを何度確認しただろう。通知の不備かもしれないとアプリを何度も再起動した。しかしメールへの返信はない。Xのメールでしかやり取りはしておらず、電話番号などの他の連絡先はわからない。これまでに必要を感じたことがなかったので、今日会ったときに聞けば良いと判断していた。  2時57分になった。  待ち合わせの時間は3時だっただろうか?と、メールの文面を何度もチェックした。  しかし、ちゃんとサカの方からも[2時ね。遅刻はなしだよ。初対面なんだから間違えたら恥ずかしい!笑]と念押しされていた。日付も間違いない。昨日の夜に[とうとう明日だね]と、日付をまたぐ前に確認し合ったのだから。  3時15分を過ぎた。  もしかしたら事故か何かがあったのではないか? それとも旦那に気づかれて止められたのか? 絵麻は考えられる限りの可能性に思いを巡らせた。  4時近くになりさすがに耐えられなくなった絵麻は、以前交換した生田の名刺をバッグから取り出した。  あれからサカは生田と会っていないようだったし、パートも辞めてしまったから生田から情報を得られるとは思えないが、少しでもサカに関係のある人物と連絡を取りたかったのだ。  コールをするが生田は電話に出なかった。  4時だから生田はまだ仕事中か。名刺には職場の連絡先もあったのでそちらにも電話を掛けてみようかと考えたが、それは思い留まった。  ジリジリと待つだけの時間に苛立ちは募っていた。  昼寝をして寝過ぎてしまって大急ぎで支度をしているのかもしれない、そんな可能性も捨てきれず、店を出ることも躊躇われた。
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