絵麻【9】

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 早苗は救急車で運ばれていった。生田は智也に連絡したあと救急車に同乗した。絵麻は救急車の向かった先を生田から聞くと、急いで病院へと向かった。  二人が家族用の待合室に座っていると、智也の姿が現れた。 「早苗は!?」  絵麻の存在に気づいて驚きの表情を浮かべたあと、すぐに生田の方へ視線を向けた。 「頭を強く打ち付けているため難しい手術のようです。出血の量が多いようで、頭蓋内にも多量に流れ出ている可能性が高いと」 「どういうことだ!?」  生田は肩を落として両肘を膝に乗せ、虚ろな目を智也に向けていた。 「わかりません」  言い終わると視線を床に移して俯いた。 「あんたはなんでここにいるんだ?」  智也は戸惑い、絵麻の方へ意識を向ける。 「今日、早苗さんとお会いする約束をしていたのです。早苗さんとは3か月ほどメールでやり取りをしていました。友達です」 「メール? 友達? あいつはメールなんかしてないぞ!」 「ご主人に内緒でしていたんです」 「そんなわけあるか! どうやってやるんだ!? スマホは毎日チェックしていたし、ラインも連絡帳も把握していた!」  智也の言葉を無視して絵麻も生田に倣って俯いた。 「どうなってる? なんなんだ!?」  智也は激昂していたが、落としどころが見つからず狼狽えていた。 「雅紀はなんで家に来たんだ!?」 「こちらの進藤さんから電話をいただいて、早苗さんを一緒に探していたんです。それで、自宅へ行ってみたら……」 「お前らどういう関係なんだよ!?」  生田もそれ以上は説明する気になれず、またも俯いた。
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