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絵麻【10】
絵麻は、先日相談に訪れていた探偵事務所へ再訪し、その場ですぐに契約を交わした。
怒りに任せて全てをなげうってしまいそうになったが、生田の言葉を反芻し、冷静になるように努め、自分にできる限りのことをすると決意した。
早苗が事故に遭った翌朝、仕事を休んだ生田とファミレスで落ち合った。
早朝に会社へ出向いて人事課で調べてきた早苗の両親の連絡先を持ってきた生田は、ソファに身体を落ち着けるとすぐに電話をかけた。
早苗の両親である北島夫妻は昨夜のうちに既に車でこちらへ到着し、病院に訪れたあと近くのホテルに宿泊していたそうで、もうすぐ再び病院へ赴き、面会をする予定だという話だった。
面会時間の前にこのファミレスで会う段取りをつけることができた二人は、そのままファミレスで朝食を取ることにした。
その時間を使って北島夫妻にする提案について十分に話し合うことができたため、夫妻と向かい合ったときには、整然と説明することができた。
「お話は理解しました。なぜあなた方がそこまで早苗のためにしていただけるのかとは不思議に思いますが、そこまで考えてくれる友達がいたことは、親として素直に嬉しいことです」
早苗の母は疲労を隠した力ない笑顔を向ける。
「今回の事故の前にも智也くんの暴力で娘は怪我を負い入院しましたが、娘がそんな相手でもやり直したいと言うから復縁を許してしまいました。あの時怒鳴りつけてでも止めていれば、と後悔してやみません」
早苗の父は鎮痛な表情で肩を落としている。
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