絵麻【10】

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 次に、智也のモラハラの証拠。DVに関しては、前回その場で警察を呼んで調べてもらうことが出来たので、医師の診断書と共に証拠は揃っている。 モラハラに関しては被害者である早苗の証言が得られないため、立証するのは難しいことだと思うが、どこまで可能かを含めてプロに依頼をすることにした。  最後の1点は、早苗に関してではなく絵麻自身の問題についてである。  今回早苗に起きた事故を顧みて、絵麻は気がついたのだ。  当たり前のように今日も昨日と同じことが繰り返されるように思えても、いつ何かが起きるとも限らない。言葉ではありふれた表現だが、それを目の当たりにしたことで、その言葉が現実のこととして突きつけられたのだ。  躊躇し続けてきた問題をこのまま放置して時間を浪費していたら、卑劣な人間の思うがままになる。  早苗の代わりに復讐してやろうと奮起した怒りが、絵麻自身の問題についても飛び火したのだ。  何もしなければ変わらない。やれば何かしら影響があるだろう。徒労に終わろうが、逆効果になろうが、怠惰な日々を過ごしているよりもマシだ。そう絵麻は考えを変えた。  ドライブをしながら思考を展開し冷静さを取り戻して来たところで、自宅へと向かう方へ車を向けた。
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