絵麻【10】

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 絵麻は、義兄の姉である朋子に連絡をして弁護士を紹介してもらった。  朋子も弁護士ではあるが、親族は弁護に関わらない方がいいそうで、直接的なことはできないができる限りの協力をすると言ってくれた。  その弁護士は尊敬する先輩弁護士だから、能力も十分だし安心して任せられると言う。  早速約束を取り付けた絵麻は、相談に行くとすぐに契約を交わした。  北島夫妻とは距離が離れているため会う機会は少ないが、頻繁に連絡を取り合って信頼関係を築いていった。  夫妻は自分たちで動けないことを詫びつつも、早苗の問題を自分のことのように熱心に取り組む絵麻を信頼し、全てを一任してくれた。  生田は絵麻の想像以上に意欲的だった。初対面の印象から、他人も人生も舐めてかかっている軽薄な男だと思い込んでいたが、意外にも真摯な姿勢を見せ、驚くほど協力的だった。  絵麻は家族や友人とは疎遠で、現在取り組んでいることについて身近に相談できる相手などおらず、孤独を覚悟していた。  北島夫妻や朋子とは電話越しにでも相談することはできたが、電話という必要以上の会話をするには機能的に向かない手段でしか繋がれないため、面と向かって雑談も交えながら話すことのできる生田の存在は大きかった。  他愛もない話をしながら気づけたことは少なくないし、孤軍奮闘する意識も生じずに済んだのだった。  3ヶ月の準備期間の間、一週間と空けずに生田と話し合えたことは、絵麻にとって精神的な支えにもなった。  倫理的に問題のある依頼を安請け合いをする度胸の良さ、それを見事に実行してしまう能力の高さは、味方になるとここまで頼もしくなるのかと驚いた。  最初のイメージが覆るほど能動的に行動する姿を見ていた絵麻は、何気なくその疑問をぶつけてみることにした。 「生田さんは、なぜそんなに一生懸命なんですか?」
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