絵麻【10】

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 突然の質問に驚く様子を全く見せず、生田はすぐに反応した。 「進藤さんこそ、なぜですか?」  当然返されるであろうと予測していた絵麻は、すぐに切り替えした。 「こんな年齢(とし)で、ネット上だけの付き合いでおかしいですけれど、早苗さんに対して、今まで出会った誰よりも友情を感じていたんです。だからですね」 「実際にお会いしたことがなくてもそう思えるものですか」 「はい」 「あ、むしろ会わないからこそ、でしょうか?」  生田は得心がいったという様子で言った。 「そう。おっしゃるとおり。プライドが高いって考えものですよね。本心をさらけ出すことができなくなる」  絵麻は自嘲的な笑みを含ませた。 「僕はですね、早苗さんのことが好きなんです」  穏やかな笑顔のまま、いつもと変わらぬ調子で生田は言った。 「叶わないことですし、ご本人にも言えないことなので、ぶっちゃけてみたくなりました」  生田はそこで少し笑い声をあげた。 「僕はこれまで恋愛相手に不自由をしたことがありません。少しでも好意を持つ相手ができたら、すぐに思いを遂げることができました。ゲームとしては簡単すぎますが自尊心はくすぐられるので、いけないこととはわかっていてもそれを趣味のようにして楽しんでいました。智也先輩から依頼されたときもあまり深くは考えず、いつものゲームの一貫として楽しめるかなと思って始めただけでした」  生田の笑顔は途中から悲哀を帯びた。
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