192人が本棚に入れています
本棚に追加
20秒後、最初に声を出したのは夫の清澄だった。
「こんなおめでたい場でそんなジョークは笑えないな」
笑おうとしながらも顔は引きつっている。
「清澄さん、事前の承諾もなくこのような場でいきなりご提案申し上げたことには謝罪させていただきます。申し訳ございません」
絵麻は清澄の方へ向き、ゆっくりと頭を下げた。
「ですが、その方が皆様のご判断を迅速にいただけると、そう考えてのことでした。私の離婚は、私と清澄さんだけの問題ではありません」
「無論そうだろう。絵麻さん、会社はどうなる?あなたの提案はあなたが思っている以上に多方面に関係があることなんだよ」
義父の言葉に父が続いた。
「絵麻、何を言っているんだ。お前と清澄くんの離婚を認めるわけにはいかない。そんなことお前もよくわかっているだろう?清澄くんの言う通り、こんなタイミングでそんなふざけたジョークはやめてもらいたい」
「お父様、このタイミングだからなのです。私はこの機会を長らく待っておりました。本当はもっと、少なくとも半年以上前からご提案させていただきたかったのですが、検査の時期もありましたので、このタイミングがベストだと考えてそれまで待っておりました」
「どういうことなの?絵麻、説明してちょうだい」
母が困惑しながら言った。
「説明は簡単です。こちらを御覧ください」
絵麻はそう言うと、コーヒーや紅茶のカップを避けてテーブルの上に書類を並べた。
最初のコメントを投稿しよう!