早苗【2】

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「智くんたちも、もう3年目でしょう。仲が良いのはいいことだけど、そろそろ子供のことを考えてもいい頃じゃない?早苗さんなんて今年25でしょう? 今から妊娠したとして、産むのは26? 三人くらい産むことを考えるとそろそろ焦らないとだめよ。後が大変よ~!」 「そうよ。私は若いうちに産んで、若いお母さんって、子供が自慢になるようにしたいと思ったもん。子供と友達みたいにさ。2歳差くらいで男と女産んで~。二人が小学生になっても30くらいだったら、まだまだ若いよね」 「偉いわ~! ひなちゃん、考えが大人! しっかりしてるわ~。誰かさんと違って旦那に迷惑をかけずに自分で将来の計画まで立ててるなんて、ホント偉いわ~!」  親子で会話をしているというよりも、早苗に聞かせているような喋り方である。 「子供ができないのは早苗のせいだから、検査を受けろっていつも言ってんだけど聞いちゃいない。母さん達からも言ってやってよ」  スマホを操作していた智也が割って入り、親子三人で早苗の不妊について非難を始めた。  義甥を追いかけながら早苗は安堵していた。義甥の相手をしていれば、義家族たちと会話をしなくても済むからだ。義甥が生まれるまでは辛かった。嫌味や当てこすりに対してひとつひとつ反応を返さなければならず、耐え難かった。  義甥の面倒を見ていれば、聞いているだけで反応を返さなくて済む、それがありがたかった。  教えてもらったわけではないが、義母と義妹が義甥の世話をしている姿を横で見ていて、手を貸してと頼まれているうちに、自然と早苗がいる時は、早苗が担当することが増えていった。  おむつ替えやお風呂など、義実家にいる間の義甥の世話はほとんど早苗がしていた。ママが良いとぐずられたときも義妹に頼ることはできなかった。孫を溺愛している義母も、孫よりも息子と娘が可愛いようで、早苗が対処する以外になかった。
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