絵麻【11】

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「ふふふ、事実じゃなーい?あのパッチリ二重のお目々、パパそっくりじゃん」  絵麻の答えに三人は同時に笑い出した。 「でも清司くんはこれから大変な人生になるのね。清司くんに罪はないのに親たちのせいで辛い思いをすることになるかもしれない」  絵麻は清司を抱いたときの感触を思い出し、その瞳が曇ることのないように祈りたい気持ちになった。 「そうだね。清司くんの今後についてはちゃんと考えてもらいたいものよね。変な噂が届かない場所で伸び伸びと過ごせるといいね」  朋子も神妙な表情になって応えた。 「清司は強い子に育つよ!大丈夫。足なんて新生児のころから力強かったんだから」  健一は一時でも我が子であった清司を思い出して目を潤ませた。 「さすがに進藤の両親がちゃんと安全に育ててくれるはずよ。湿っぽい話題はやめよう! さぁ飲もう、飲もう!」  絵麻が笑顔を作ってジョッキを掲げ上げた。  それに応えて二人も再び飲み始めた。 「そろそろお開きにする?」  朋子の提案に絵麻は口をすぼめて抗議する。 「えー、まだ飲み足りないよ」 「絵麻さん、帰る時間があるじゃん。ここらへんホテルなんてないし、さすがに家は狭すぎて泊められないよ」 「また来てくださいよ。また三人で飲みまひょ~」  健一は酔いが進んでろれつが回らなくなっている。 「僕はもう寝ちゃうかもしれない……」  健一はそう言うとテーブルの上に顔を突っぷした。  絵麻はその姿を見てため息をつくと、抗議するのを諦めて伝票を手に取った。
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