早苗と絵麻

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 早苗の横顔を見つめながら、さらに続ける。 「サカさんありがとう。あなたのお影で頑張ることができたよ。あなたに出会えたことで、私は変わることができた」  微動だにしない早苗を見て、絵麻の目に涙が滲む。 「サカさんと話したい。メールでもいいから、もっと色んなことを話したいよ。あなたをこんな目に遭わせた男を制裁できたことも、あなたが一人で耐えていたことを多くの人が後悔して、それを償いたいと思っていることも、話したいことがたくさんあるよ」  涙がせり上がってきて言葉が詰まる。 「サカさん聞こえてる? たくさん話そうよ。もっと、サカさんのことを教えてよ。色々話してよ。私たち、これからなのに……。これからだったのに……」  嗚咽が混じり始めた絵麻は、口元を片手で押さえて立ち上がり、窓際へ向かった。  絵麻と早苗の様子を伺っていた生田が、ベッドの右サイドへと歩み寄り、置かれていた丸椅子に腰を下ろした。  掛け布団を下にして身体の脇に出ていた早苗の右手を、生田はそっと手に取った。早苗に視線を移して微笑みかけると、その手を握りしめた。 「早苗さん、あのとき僕を受け入れてくれたこと、あなたはその場の空気に飲まれるような方ではないと思うので、本心から受け入れてくれたのだと、そう解釈してもいいですか?」  早苗を穏やかに見つめたまま、生田は続ける。
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