早苗【2】

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 居心地の悪い義実家で、空だけが別個の存在だった。兄弟のいない早苗は、子供を産んだ友達とも疎遠になり会っていないため、幼い子供に近づく機会がなかった。  夫や義家族にいくら尽くしても当然のことだと受け取られるだけで、感謝はおろか笑顔の一つすら返してもらったことはないが、空だけは違っていた。むしろ一人で生きることができない乳児なのだから、当然として受け入れていればいいものを、早苗が世話をしてあげるとにっこりと微笑み、あやせば声を出して笑ってくれる。自分の行動によって好意的な反応を返してくれるのは、今の早苗には空しかいなかった。  母親に甘えたい盛りだろうに、あまり母親である義妹に近づかない。1歳を過ぎてすぐに保育園へ通っているみたいだから、他人と過ごすことに慣れているということだろうか。空を抱っこして、少しあやしてあげた。  義母が風呂場を出た音が聞こえたので、サボっていると咎められることを恐れ、慌てて空を床に降ろし、家事を続けた。  義家族が全員風呂に入った後、早苗は空と入浴した。空の着替えを済ませリビングへ連れて行ったあと、洗濯を回しながら風呂場を掃除した。義実家へ来ても、自宅と同じように家事をこなす。今では、義家族と座って会話しているよりも楽だから、むしろ自ら進んで探してしまうくらいである。  急いで髪を乾かし、空の世話をする。寝ぐずりしていたので寝かしつけをしていたら、そのまま早苗も寝落ちしてしまった。  深夜2時頃に目を覚まし、回しっぱなしだった洗濯物のことを思い出して、慌てて飛び起きた。  音を立てないように慎重に部屋を出て、暗闇の中リビングへと向かう。リビングの一面、駐車場に面した部分にサンルームがあり、常夜灯だけをつけて洗濯物を干した。
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