早苗【2】

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 もしかして、浮気なのだろうか?友人たちというのは、女性も一緒だったのだろうか。居酒屋かどこかで居合わせた人を送ってあげようとしたのだろうか。何のために一度戻って来たのだろうか。お酒は飲まなかったのだろうか。  答えの出ない問題を何度も繰り返し問いていて、眠れなくなったのだった。  6時頃起き上がり、布団を片付けて着替を済ませると、キッチンへ降りていき、朝食の支度をした。義父が起きてきたのでコーヒーを出した。義父は無言のまま新聞を読み、コーヒーに口をつけた後、目も合わせずに散歩へ出かけた。  義父は毎朝の散歩を習慣にしているようで、雨でも台風でも大雪でも関係なく決行する。強迫的ともいえる日課だ。義父はほとんど話さない人で、未だにどういう人なのか掴められていない。  義実家へ来ると、義母6割、義妹3割、智也1割といった割合で声が聞こえる。義父はほぼゼロだ。無言でテレビを見ているか、飲食しているだけだった。早苗は家事で忙しいため、話題を振ったほうがいいのかと気に止める余裕はなく、傍観するに留めていた。  朝食が出来た頃、義母と義妹が現れた。義妹は何も言わず、自然な動作で息子を早苗に預ける。受け取った早苗は、義甥のおむつを替え、着替えさせ、用意していた乳児用の朝食を食べさせ始めた。  その間、義母と義妹は朝食をとりながら会話をしていた。 「早苗さんも、ひなちゃんの厚意のお影で育児の体験をさせてもらえてありがたいわね。こんなに親切な義妹はなかなかいないわよ」 「家事の練習をさせてくれる、こんなに優しい義母もいないわよ。将来同居させてもらうために、義実家のしきたりを学べるなんて、頭を下げてもなかなかやらせてもらえるもんじゃないわ」
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