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朝食を終えた8時頃、散歩から帰宅した義父のために朝食を用意していると、智也が帰宅した。
車内で酔いを冷ましてきたとは思えない。さっぱりと晴れやかな表情は、まるでシャワーでも浴びてきたようだった。機嫌もよく、妹に冗談を言ったり、甥を抱っこしてあやしたりしている。
着替えを済ませた智也は、朝食を食べている義父の向かい側に座った。早苗が智也の前に朝食を置き始めると、
「コンビニで買って食べたから要らない。コーヒーだけくれ」
とぶっきらぼうに言った。
「あのさ、母さんの職場ってパートとか募集してる?」
早苗の置いたコーヒーを一口すすってから、母親の方へ顔を向けて智也が話しかけた。
声をかけられ、ソファからテーブルへ移動しながら義母が応える。
「万年人手不足よ。入ってきても使えなくて、すぐに辞めちゃう。今どきの若い子は全然だめね。根性もないし」
「早苗にパートでもしてもらおうと思ってるんだけど、母さんのとこはどうかな? 母さんが一緒なら早苗も気が楽だろうし、母さんも早苗なら使えるまで鍛えられるだろ?」
「あら、早苗さんは主婦業でお忙しいんじゃないの? 私のように働きながら立派に主婦業もこなせる体力なんてあるかしら?」
「二人家族の家事なんて大したことないって。それなのにいくら言っても働いてくれないんだ。母さんが働きながら俺たちを育ててくれたように、早苗にも働いてもらいたい。母さんが段取りつけてくれれば、怠け者の早苗でもやる気になってくれるだろう」
「なんて嫁かしら! 夫に食べさせてもらってるのに言うことを聞かないなんて! やることやらずにだらけているような人を養ってくれてる夫の身になって欲しいわね!」
義母は憤慨して大声を出した。
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