絵麻【2】

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絵麻【2】

 絵麻は午後の散歩を済ませてシャワーを浴び、着替えをしているところだった。夕方には両家の親と会社の重役が数人訪れる予定だ。隔月毎に持ち回りで行っている、恒例の夕食会がある。  10日前に一方的に顔だけ見ているが、夫の清澄と対面するのは2週間ぶりだった。夫婦としての関係の薄さを今さら気にする絵麻ではないが、こんなに間が空いたのは久しぶりだなと考えた。  着替えを済ませ自室の椅子に腰を掛けると、絵麻は大きなため息をついた。義姉の清香に会うと思うと気が重い。恒例の夕食会も、うわべだけの会話が面倒で憂鬱だった。  気を紛らわせるため、スマホを開いて愚痴を呟く。  すると、すぐにリプライがあった。  サカ☆カササギ[義両親に会うのって面倒だよね。気を使って疲れるし、あれこれ言われて面白くないし。うちには義妹がいるけど、先週なんて義母と一緒にダブルで攻撃されて最低だったよ]  絵麻は思わず頬が緩んだ。義家族に悩んでいるのは自分だけじゃないと励まされた。  EMA522[うちは義姉だよー。気を使うし面倒だよね。せっかくのご馳走を食べても消化が悪くなる]  サカ☆カササギと毎日数通のメールのやり取りが続いていた。ほとんどが他愛もない内容だが、人生相談レベルの突っ込んだ内容よりも、他愛もない内容を日々やりとりすることの方が親しみが湧くものだ。  時間になったので絵麻は階下へ降りた。階段を降りた先にあるホールに清澄がいた。階段を降りる音が聞こえたのか、清澄がこちらを見上げたので、2週間ぶりに夫と視線が合った。 「なんだか久しぶりな気がする。絵麻ちょっと太った?」
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