絵麻【2】

3/10
前へ
/227ページ
次へ
「縁談の話は色々いただいていたんだが、頑固な娘は会うことすら首を立てに振らない。どうしたものかと何年も悩んでいたんだが、なんと自分で相手を見つけて出してきた。親から見れば物足りない相手だが、娘は彼以外に考えられんらしい。こうと決めたら頑として譲らない性格なものだから、こっちが折れざるを得ない。娘が幸せになるなら、それくらいいくらでも折れてやることにした。」  そういって義父は大声で笑った。 「芯のある娘さんですもんね、今どき、そのくらいがいい!」 「社長、清香さんはしっかりされていなさるから、自分で決めた相手が一番ですよ!」  代表取締役の2人の子供が、親の意思で結婚させられたことは周知のことだが、表向きは恋愛結婚ということになっている。  清香が頃合いを見て立ち上がり、周りを見渡してながら話し始めた。 「皆様、お祝いのお言葉大変嬉しく思います。今日はサプライズでお相手の方をお招きさせていただいきました。皆様に一番先にお話して、お目通しをしていただきたいと考えてのことです。スケジュールの関係で食事の後になってしまいましたことをお詫びいたします」  少量だが、どよめきの声が起きた。 「お呼びして」  清香が使用人に声をかけると、ダイニングのドアが開かれた。すでにドアの前で待機していたのか、そこには緊張して表情を引きつらせた若者が立っていた。開けられるとすぐに深々と一礼し、入室した。 「み、皆様、初めまして」
/227ページ

最初のコメントを投稿しよう!

189人が本棚に入れています
本棚に追加