何色にも染まらない

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「本当にありがとうございました。あれだけの事態を収めてもらって、これっぽっちの報酬と言うのは、申し訳ない気がしますが……。」 スーツ姿の男が3人、俺に向かって少し厚めの封筒を差し出す。 「仕事に大きいも小さいもねぇ。俺は仕事をして、決まった額だけ金をもらう。ただそれだけの事だろう。」 「あ、ありがとうございます……。」 差し出された封筒を受け取り、中身を確認する。 古い札で、100枚。 これが、今回俺がこの男たちに提示した金額だ。 「本当に助かりました!」 「この街で店を開こうと思うなら、この街の裏社会についてもしっかり学んだ方が良い。『こっちの世界』に首を突っ込みたくないなら、もっと田舎の穏やかな場所で店をやるんだな。」 早く出ていけ、と俺は煙草の煙を吹きかける。 男たちはおずおずと去って行った。 「ったく……。こんな仕事で食っていけるんだから、この街にはつくづく馬鹿しかいねぇんだな……。」 とある街の、とある小さな事務所。 俺はここで、『仲介屋』を営んでいた。
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