何色にも染まらない

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都心が栄え、輝くほど、繁華街の闇は深くなる。 それが、この国の必然だ。 俺が行う仕事は、『仲介』。 喧嘩の仲介、もめごとの仲介、辞職の仲介……。 大きい仕事から小さい仕事まで、『仲介』と言う仕事は尽きることがない。 最近では、『会社を辞めたいのだが、辞表を上司に渡すことも憚られる』などと言う依頼者も多い。 全く、意気地のない成人が増えたものだ。 こういった仕事は、酒の足しにもならない。 それでも断らない理由、それは俗にいう『営業活動』だ。 『大きい仕事から小さい仕事まで』と謳っているのは、この街に住む人が『誰でも』依頼をしてくれるようになるため。 知名度が上がれば食い扶持も増える。 この街では食い扶持を如何に上手く稼ぐかが、生きていくコツなのだ。 大きい仕事の方が多いこの街。 しかしながら、大きな仕事ばかりでは身が持たない。 組織に属していない、俺は一匹狼でこの仲介屋をやっているのだから。
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